第1章 甘い?甘くない?……やっぱり、甘い
・・・
「そんな事言わないで……あなた……」
ちょっと口元を隠して、頬を赤らめて師範に流し目で訴える。もう行きましょうと。店主には恥じらっている若奥さんに見えるだろう。
「ごめんなさいね、この人、恥ずかしがり屋で……ほら、もう行きましょうあなた。」
師範は目を見開いたまま固まっているが、構わずグイグイ引っ張ってその場を離れた。
街の真ん中には大概川が流れており、そのほとりにある長椅子へと師範と腰掛けた。
「師範すみません。その場を凌ぐ為とはいえ失礼な事を。」
未だに固まっている師範に謝るが、聞いているのか分からない。
「師範……師範?」
顔の前で手を降ってみるが反応がない。
一体どうしたというのだろうか。