第1章 レモンティーの行方【ミスラ】冷→甘
たとえ賢者として皆が心配してくれているのだとしても、自分の事のように真剣に悩んでくれたり考えたりしてくれるのは素直にとても嬉しかった。
何か問題が起きた時、頼れる彼らがいることへの安心感も膨らんだ。
だが、それと同時に彼らに頼りきりではいけないとも。
大切に接してくれる彼らの賢者は自分なのだ。そしてミスラもまた賢者の魔法使い。命の危機でも何でもないこの状況すら彼らに任せ切りでは賢者として情けないというものだ。
それに親身に相談に乗ってくれた彼らにこれ以上心配を掛けたくもなかった。
様々な提案をしてくれた彼らだったが、心苦しくもごめんなさいと丁重に断った。
結局、より一層心配を掛けてしまったが自身で乗り切ってみせると断言して先程自室に戻ってきたところだ。
優しい陽の光が差し込んだ部屋を見渡して改めて部屋の大きさを確認する。
ここでミスラが寝るとなると187cm(賢者の書調べ)も身長があるから圧迫感を覚えるだろう。
狭くはないが広いわけではない。机や本棚なども備え付けられているから寝る場所は限られている。
一緒のベッドで眠るわけにはいかないので床で寝てもらうわけだが、断然あたたかいカーペットがある室内のほうが廊下よりずっとマシだろう。
予備の毛布なども合わせれば風邪をひかずに済みそうだ。
まあ、ミスラは風邪をひかないそうだが…。
そして一番重要なこと。
それは自分の身の安全…!
つまり貞操の危機はないかということ。
皆はそこを心配してくれていたと思うが、よくよく思い出してみればミスラにそんな気は一切なさそうだという結論に至った。
今までの言動行動から、ミスラはただ賢者の力で睡眠不足から解放されたいだけであって下心などないように感じた。
そもそも女性として見てくれているのかも怪しい…。
兎も角私も余計な気を張らず、きちんと眠ることが出来ればミスラも眠れて無事解決するのだ。
うんうん、と一人頷いて納得した。
案外大丈夫そう。
そう、その時は楽観的に考えていたのだ。
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「賢者よ」
「賢者よ、居るか?」
部屋をノックしたのはスノウとホワイト。
気が付けば夜も深まる時間帯になっていた。
昨晩の寝不足もあってか賢者の書を読みながらうたた寝をしてしまっていたようだ。
どうぞと部屋に二人を迎える。