第1章 レモンティーの行方【ミスラ】冷→甘
「賢者ちゃんは優しい子なんじゃ」
「賢者ちゃんはいい子」
スノウとホワイトがほほほと笑う。
「賢者さまはミスラさんが心配だったんですよ」
「そうですよ。ミスラさん」
ルチルやミチルも後に続く。
「では心配を取り除かなくてはなりませんね」
「んー、でもどうするんだ?」
リケとネロが困ったようにこちらを向く。
「そんなの簡単ですよ」
さらりと言ってのけたミスラ。
「要するに廊下で寝ているから気になるんですよね」
「…そう、ですね?」
「なら同じ部屋で寝ればいいだけじゃないですか」
「ん?」
「え?」
「は?」
一瞬そこにいた全員が固まり呆ける。
「何ですか?」
皆の態度が予想外だったようでミスラも驚く。
「ミスラさん、賢者様は女の子なんですよ!」
「そうですよミスラさん、婚姻前の女性の部屋で眠るのは良くありません」
ミチルの言葉に続けてルチルも柔らかく諌めた。
「じゃあ結婚すればいいんですか?」
「そういう問題ではありません…!」
変な方向へ話が進んでいくのを見兼ねて突っ込んだ。
だがミスラは
「…あ、でも結婚しても誓えるものはありませんがそれでもいいですか?魔力失いたくないので」
人の話をまるで聞いていない。
「ミスラよ!結婚も同じ部屋で寝るのもいかん!」
「我らでも一緒に寝たことないのに!」
双子はあざとらしくぷくっと頬を膨らませた。
「知りませんよそんなこと。」
面倒臭そうに言い放ったミスラは、もう話は終わったと言わんばかりに踵を返した。
食堂の入り口まで行ったかと思うと私の方へ一旦向き直り
「今夜からよろしくお願いします」
一方的にそう言葉を残して食堂を出ていってしまった。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
その後の皆の慌てようは、心配してくれる彼らに悪いと思いつつも気持ちが和んでしまうほどだった。
今晩ミスラが私の部屋に現れた時の対策を色々と考えてくれた。
ファウストに結界を張ってもらうだとか、レノックスに見張りをお願いするだとか。オズが夜も魔法を使えていたなら双子は彼にも相談しているかもしれない。