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微睡むお茶会【魔法使いの約束】

第1章 レモンティーの行方【ミスラ】冷→甘



「賢者様に生命の危機を感じてもらおうかと」
何でもないようにそう言ったミスラ。
そこには何の感情も見えない。

「ミスラさん!止めてください!」
「そんなの危ないですよ!」
ルチルやミチルが言葉を投げ掛ける。

「おいおい」
静かに成り行きを見ていたネロも慌てる。

「ミスラや、賢者に怪我をさせたら只ではおかんぞ!」
双子の剣幕で瞬間的に空気がピリリとした。
周りの魔法使い達も息を飲む。


ミスラは相変わらず何を考えているのか分からない表情で、はぁ、とひと息

「怪我をさせるつもりはありませんよ。面倒なので」



「え?」

途端にその場にいたミスラ以外の全員が毒気を抜かれた。
ただ、ゆらゆらと動く巨大氷柱と今のセリフは全く噛み合っていないが…。



「怪我をさせなくても恐怖さえ与えればいいかと。違いますか?」
小首を傾げ、さも当たり前のように問いかけてきた。
本当に怪我をさせるつもりはないようだ。

「ミスラや、とにかく氷柱を戻すんじゃ」
「焦らんでも夜になれば賢者は眠るじゃろ」
2人が子どもをあやすように宥める。
「俺は今すぐにでも寝たいんですが」
ミスラは不満たっぷりにそう言いつつも氷柱を消した。
食堂の空気も安寧を取り戻す。



「・・・その、気掛かりが一つ残ってます」
通常に戻りつつあった場の空気に水を差すようで申し訳なく思ったが、そっと手を挙げた。
「ミスラが廊下で寝ていたら昨晩のように気になって今夜も眠れないかもしれません」
ミスラ本人の前では何となく恥ずかしくて言いたくなかったのに。

「そうじゃった!」
「むしろこっちの方が深刻かもしれん!」

「どういうことです?」
ミスラは側へ寄ってきて、座っていた私の顔を軽く覗き込んだ。

「えっと、床は冷えますし体調を悪くしないかな、とか」
「はあ」
「廊下で寝ているミスラを放っておいて本当に良いのか、とか」
「はあ」

目を合わせるのも躊躇われ気まずそうに下を向いて話す私をミスラは不思議そうな顔をして聞いていた。まるで珍獣を見るように、驚いたふうに目を大きく開きながら。
ミスラにしては珍しい表情だった。

「賢者様は変わってますね」
更に私をまじまじと見る。
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