第1章 レモンティーの行方【ミスラ】冷→甘
決意のような小さい願望を胸に秘め、鍋でミルクを温め始めた。
程よく温まったミルクをマグカップに注ぎ蜂蜜をほんの少し垂らす。
その瞬間、甘い香りが辺りに広がった。
先程より自然と気持ちも落ち着く。
自分用のレモンティーも用意してから自室へと戻った。
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「どうぞ」
テーブルが無いのでミスラに直接マグカップを手渡した。
「…ホットミルクですか」
「温かいミルクを飲むと落ち着きますし眠れるかもしれません」
「はあ、そうですか」
自分も向かい側に座りレモンティーを口にする。
深夜に飲む紅茶もまた美味しい。
暫くお互い沈黙のままマグカップに口を付けるだけの時間が過ぎた。レモンの爽やかな香りと蜂蜜の甘い香りが混ざり、良い香りが部屋中に漂っている。
「賢者様は違うものを飲んでるんですか」
香りで気が付いたのだろう、私の持っているマグカップを覗き込んだ。
「私はレモンティーです。毎朝ネロに淹れてもらってるくらい好きなんです」
「紅茶好きなんですか」
「はい!でも紅茶に限らずお茶は好きですよ」
つい好きなものの話になると顔が綻ぶ。
「今度、寝付きが良くなるハーブ差し上げましょうか」
「え、いいんですか?」
「構いませんよ」
ミスラの表情は相変わらず読み取れないが、初めて気遣ってくれるようなことを言ってくれたのが何だか嬉しくなった。
「ありがとうございます!ハーブティーにします!」
「ええ、どうぞご自由に」
目を合わせてはくれないが軽く首を縦に降ったミスラ。
話が続いた勢いで、先程食堂で考えていたことを切り出した。
「あのですね、ミスラ。」
「・・・・・・・・・」
視線がこちらを向く。
「私と同じ部屋で寝る以外の方法も試してみませんか?」
「はあ」
「勿論私もちゃんと寝れるよう明日からまた頑張りますから!」
「さっきも言いましたが頑張るものですかそれ」
若干呆れ顔で言われた。
「き、気持ちの問題ですから!それでどうでしょうか?」
「どうでしょうかと言われても、俺も試しましたよ色々」
今晩何度目かの溜め息を洩らす。