第7章 卒業おめでとう【不死川実弥】
何度もキスを繰り返しているうちに、だんだんと深いものへと変わっていく。
酸素を求めて僅かに口を開いたら、その瞬間を見逃さなかった先生が舌を口内へ滑り込ませてきた。
『!!…ッ、ん…ぅ…んんっ』
こんな大人のキス…どうしたら良いんだろう。酸欠気味で頭がぼんやりしてきて先生にされるがままだ。同じように舌を絡めたら良いんだろう、と思うけれども…上手く出来ている気はしない。
舌を抜き、唇から離れてゆく温もり。
「廊下でも聞いたが……お前は…?」
ニヤリと笑って唾液に濡れた私の唇を先生の指が拭う。
『……好き。…先生の事、ずっと…好きでした。』
「俺も。…3年もよく我慢出来たと自分を褒めてやりてぇ。」
『…3年…。…ずっと、好きでいてくれたの…?』
「そうだ。…廊下ですれ違っても挨拶だけだし、バレンタインはお前だけ持ってこねぇし。テスト返す時に声かけても目合わさねえし。…どっちかっていうと嫌われてんのかと思ってたぜ」
身に覚えがあり過ぎて、恐縮する。
『…だって…は…、恥ずかしくて…。皆みたいに…先生と話したり出来なくて…。』
「…そんなお前が俺は好きだ。…やっと卒業したしなァ。もう我慢しなくて良いよな…?」
『…ーッ、…はい。…好き、です。ずっと…出会った時から。先生が好きでした。』
思わぬ「片思い」からの卒業に涙が溢れる。今日は朝から泣いてばかりだな…。でも、嬉しい涙の方が多くて心が満たされていく涙だ。
「…今日、帰したくねぇんだが…。…嫌か?」
頬を撫でながら少し不安そうに聞く先生。帰したくないの意味がわからないほど「子ども」じゃない。
それに…今は先生と離れたくない。
頬を撫でる先生の手に自分の手を重ねた。
「…紗英…?」
『…帰らない。…帰さないで。』
精一杯、微笑みながら伝えれば先生は一瞬驚いた顔をしたけど、すぐに優しく微笑んでくれた。
「…絶対、帰してやんねぇ。」
先生がコツンと私のおでこに頭を当て、2人で笑い合った。