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君がため【鬼滅の刃】

第7章 卒業おめでとう【不死川実弥】




ぎゅっ…とスカートを握りしめ、こみ上げる「好き」を押さえ込んだ。


『ははっ…そんな…、数学好きな子はいますよ。』


取り繕うように笑って答えるのが精一杯だ。


「そういう意味じゃねぇけどよ。…まあ、でも…安積が生徒でいられるのも困るがなァ」


じゃあ…どういう意味…ですか…?…聞いてみたいけど、怖くて口になんて出来ない。


『そ、そりゃあ…いつまでも高校生だったら困りますね!』


「…いつまでも『生徒』と『先生』じゃ…、なあ?安積…。」



何だろう、この大人の色気みたいな空気。…今にも愛を紡ぎ出しそうな甘い空気感が車内を包む。


『…っ、先生…?』

「着いたぜ。降りてみるかァ?」


着いたぜ、と示された場所は海が一望できる高台。ドライブスポットのようで広めの駐車場の脇には自動販売機やお手洗いなどがあった。ベンチも所々に設置してあり、海が見下ろせるようになっている。


『…わぁーーーー!!海だぁ!』


小走りで柵のところまで行き、夜の海の匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。


「おい、転ぶなよォ!」

『はーい!大丈夫です!』


少し先で灯台が夜の海を照らしている。


「ほら。…寒くないか?」

そういって先生が着ていたジャケットを私の肩にかけてくれた。

まだまだ夜風は冷たいのに…先生が触れた肩が熱くて仕方ない。


『ありがとうございます。…先生は寒くないの?』

「寒くねぇよ。心配すんなァ。…顔、冷たいぞ」


先生の指が頬を撫でる。…どうしよう…顔、真っ赤じゃないかな。寒いどころか、一瞬で暑くなってしまった。



「…いつまでもお前が生徒じゃ困るってのはな…こういう事出来ねえからだよ。」



そう言った先生は少し屈んで、私の唇にキスをした。……ーー。




ゆっくり離れていく先生の唇。…目を閉じるのも忘れ、驚きで見開いたままだった事にその時やっと気付く。


「…やっと、お前に触れられる。」


先生の大きな手が頬を包み、もう一度キスされると思って今度はぎゅっと目を閉じた。



「…好きだ、紗英。」


驚きの声は、先生のキスに塞がれて喉の奥へと落ちていった。






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