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君がため【鬼滅の刃】

第7章 卒業おめでとう【不死川実弥】




料理は創作フレンチだけど和食みたいに箸で食べられる料理ばかりで、どれも美味しかった。

最初こそ緊張して味がよくわからなかったけど、食べているうちに緊張より美味しさが勝ってしまったのだ。


車内での話の続きをしながら、2人胃袋を満たしていった。



デザートが運ばれてきて、そっと私の前に置かれた皿にはチョコレートで「卒業おめでとう!」と英語で書かれていた。


『…先生…。これ…』

「卒業おめでとう、安積。」


約束なんてしてなかった。…よく考えたらこういう店って予約制だし、お皿のメッセージだって…先生が急いで手配してくれたんだ…。


『……っ、あ…ありがとう、ございます…。』


嬉しくて、嬉しくて…あんなに先生に見せるのを我慢していた涙だけど、こみ上げてくるそれを止める事なんてもう出来なくて。

先生はデザートを前に涙ぐむ私をあくまで見ないようにして、珈琲にゆっくり口をつけていた。




ーーーーーーーー



『すみません、ご馳走になっちゃって…』

「お前に出させる程、クズじゃねえよ。それに…お祝いだ。」

照れ臭そうにフイっと顔を晒して助手席を開けてくれた。




「まだ…時間、大丈夫か?」

車を発進させる前に声をかけられ、時計を見れば時間は21時に差し掛かろうとしていた。


『はい。大丈夫ですよ。』


……まだ先生と一緒に居たい。出来れば…、ずっと。今日でこの思いからも卒業しようと思っていたはずなのに…無理だよ。どんどん好きになってしまう。


「…ちょっと走るか。」


車を発進させ、当てがあるのかないのか街中を走ってゆく。


洋楽が流れる車内。…互いに無言の時間が過ぎていくけれど、嫌じゃなかった。


「…寂しくなるなァ、お前が卒業したら」

『え!?…あぁ、数学好きな生徒がいなくなっちゃうから…でしたね。』


式に向かう途中での話を思い出していた。


「…ヤル気が出ねぇな。…お前がいねえと。」


そんな…勘違いしてしまいそうな事言わないで欲しい。「私」がいないからだって…思ってしまうじゃない。




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