第7章 卒業おめでとう【不死川実弥】
「最後に宇随先生に告白しようかなー!?」
「えぇー、じゃあ煉獄先生に私も告白しようかな?」
体育館へ向かう道すがら、女子たちの黄色い楽しそうな声が聞こえてくる。
皆、凄いなあ…。冗談にしろ本気にしろ、そんな勇気…私にはないなあ。
小さく溜息が零れる。
「…なんだァ?卒業が嫌か?」
いつからそこに居たのか…不死川先生が隣を歩いていた。
『!!…え、あ…えっと、そう…ではなくて…』
急な登場に頭が働かず、舌が回らない。
せっかく話せるチャンスなのに…
「さねみんと離れるのが寂しいのよ、紗英は!」
隣にいた友達が揶揄うように口を挟んできた。
『ちょっ!やめてよ…そんなんじゃないから!』
つい、強い口調で否定してしまった。
…ああ、もう…ほんと…バカじゃないの…私。
友達はケラケラと笑っているし…不死川先生の顔は、怖くて見れなかった。
「…俺は寂しいぜ。安積みたいに数学好きな生徒いねえしなあ。」
「えー!さねみん、私はー!?」
「お前は最後の最後まで赤点取りやがって…。落第にしてやりてぇところを卒業させてやるんだから感謝しやがれ!」
「えぇーひどくない?ねえ?紗英!」
『え!?…あぁ、ははは…』
先生が寂しいと言ってくれたのが信じられなくて、嬉しくてその後の会話が全く耳に入ってきてなかったから乾いた笑いを返してしまった。
寂しいって…数学好きな生徒が卒業するから、だけど。
それは『私』に限った事じゃないって…ちゃんと分かってる。
大丈夫。…舞い上がったりしない。
「紗英は地元出ちゃうから、寂しいな〜…。ね、時々はちゃんと帰ってきてね!遊ぼうね!」
腕を絡めながら念押ししてくる友達。その気持ちが嬉しくて笑顔になってしまう。
『当たり前だよ!帰ってくるから、遊ぼうね!』
「絶対だよ〜!!あ、ごめん!ちょっと話してくるね!」
前を歩いて行く別クラスの彼女の友人達に手招かれ走って行ってしまった。
それはつまり…不死川先生と2人になってしまった…という事だけど。