第6章 朝日が昇る【竈門炭治郎】
屋敷に着いた時には、すっかり夜になってしまった。
…悲鳴嶼さんのいる所…遠いわ…。
今日は非番で夜警もない。…少しゆっくり考えようかしら…。
「紗英さん」
「…竈門、くん」
訂正。ゆっくり考えるのは無理かも。
夜分に家先で話す訳にもいかず、邸の中へと招き入れた。
「夜分にすみません。」
『いいえ。場所は…しのぶに聞いたのね。妹は?一緒でなくていいの?』
「はい。禰豆子は今、蝶屋敷で眠っているので。」
『そう。』
ソファに座る竈門くんにお茶を出し、向いに座った。
…気不味い…。
「洋風…ですね!初めてです、洋風の家にお邪魔したのは!」
『そう?案外落ち着くのよ。着てるものは着物だけどね。』
あははっ!と、竈門くんが笑ったが…その後が続かずまたしても無言時間が訪れた。
『…今日は?どうして?』
「はい、えっと…そろそろ任務に戻れそうなので。…しのぶさんの屋敷を出る前に…挨拶を、と思って。」
『そう。…良かったわね。顎も大丈夫そう?』
「はい!もう大丈夫です!」
屈託なく笑う。…少年のようだったり、時には…男の人だったり。
竈門くんの一つひとつに揺さぶられる。
『…ありがとう。』
「え!?ええ!?お礼言われる場面でしたかっ!?」
『ううん…。でも、色々ありがとう。…お陰で…これからの事考えられそうだから。…竈門くんのおかげ。…好きって…言ってもらえて嬉しかった。』
「紗英さん…」
竈門くんが移動してきて…ソファに座る私の前で膝をついて
私の手に自分の手を重ねた。
「…俺はやっぱり…紗英さんからしたら、子どもだし…隊士としても全然及ばないです。…でも、紗英さんを想う気持ちだけは、誰にも負けません。絶対。…好きです。紗英さん」
頬に伸びる竈門くんの手に、少し身体が震える。
『……好き。…竈門くんが…、炭治郎くんが……好き…』
頬を流れる涙を指で拭き取り、そっと両手が私の頬を包む。
「…紗英さんに、触れたいです。…良いですか?」
戸惑いつつも首を縦に振れば、優しく微笑む炭治郎くんに口付けられた…ーー。