第5章 今夜、君と恋に堕ちる。【不死川実弥】
1日終わる頃にはドッと疲れ果てた。まだ月曜日とかふざけんなよ。
「なんだかお疲れね?不死川くん」
にこやかな笑顔でカナエ先生が話しかけてきた。
「…知ってたんですか?アイツが実習に来るって」
俺には言わなくても流石にカナエ先生には話しているんだろうと考え、思い切って尋ねてみた。
「知ってたわよ〜。でも不死川くんには内緒にしてねって言われてたから。ごめんね?」
…やっぱりか。
「紗英ね、わざわざ希望して此処に実習に来たのよ」
「…!?…なんで…」
「本来なら卒業校で実習するのが通例だけどね。…不死川くんに担当教諭になってほしかったみたいよ?ど〜しても、ね!」
うふふー!と笑いながら席に戻るカナエ先生。
なんなんだよ。何で俺に、わざわざ…。だったら何で秘密にしとくんだよ。あー…わからねえ。思考停止…。
「なあ安積ちゃん、家どこよ?送っていくぜ?」
思考停止してる場合じゃねえ。宇随が紗英を誘ってる声がバッチリ耳に届いた。
『ここから1時間以上かかっちゃうので。大丈夫ですよ、帰れますから!』
「遠いなっ!それこそ心配だわ。遠慮すんな、送っていくって」
ゴリゴリに押してくる宇随に、流石の紗英も困っているように見えた。
「さっ!帰るぜ!お先〜」
断る紗英などお構いなしに、その手を取り突き進んでいく。
「……っ、…おい。安積はまだ仕事が残ってんだよ。勝手に連れて帰んなァ」
「…なーんだ、そうなの?じゃあしゃねえか。じゃ!また明日な安積ちゃ〜ん」
そう言って、ひらひらと手を振りながら帰っていった。
もの凄くアッサリ引き下がって帰っていく宇随に拍子抜けしてしまったが、ちらっと横目で紗英を見ればホッとしたような表情をしていた。
「…小テストの採点。終わってねえんだ。手伝え」
『!!…はいっ』
思いっきり残業になり、実習生を遅くまで残してしまった事には少々反省したが、いつもの雰囲気とは違う紗英が隣に居るのは…悪くないと思った。