第4章 君が笑顔の日【不死川実弥】
胡蝶様のお屋敷で胡蝶様自ら診察して頂く間、実弥様は食事を用意してもらったようで別室で召し上がっていた。
「紗英さん、どういった症状が出たのか教えて頂けますか?」
『はい、えっと…今朝、起きようとしたら身体が怠く…とても眠くて、起き上がれない程眠いのは初めてのことで。あと、少し嘔気が…。』
実弥様の熱に反応してお腹が僅かに引きつれたような違和感があったことや、乳首に触れられ痛みがあったことは……流石に言えなかった…。
「そうなんですねえ、…ふむ、紗英さん、月のものは来てますか?」
『…月のもの…?』
…そういえば、最後に来たのはいつだっけ…。
ひと月こないことは稀にあることだったせいか、あまり気にせずに居たが、それにしても最後に来たのはいつだったか。
私が首を傾げ考えていると、胡蝶様はにっこり笑って此方を伺っておられる。
「産婆さんをお呼びしましょう。少しお待ち下さいね。」
産婆さん…!?と驚く私を他所に、アオイちゃんに産婆さんを呼ぶよう指示している。
「恐らくご懐妊されたのではないかと思います。産婆さんに診て頂きましょうね。」
『…懐妊…、子どもが…出来た、…私に?』
「はい。恐らく。月のものが来てらっしゃらないようですし、眠気や怠さ、それに嘔気。つわりの症状ではないでしょうか?」
実のところ、実弥様と結婚して4年程になるがその間避妊はしていないにも関わらず、子どもは授からなかった。
最初の頃は気に病み、その度実弥様は声をかけて下さった。あの頃は自分ばかりが辛く不甲斐ない気持ちだったけれど…落ち着いて考えてみれば、実弥様だってそんな私を見るのは辛かった事だろう…と後から酷く反省した。
そして…このところは、授かることがあれば嬉しいな…くらいの気持ちになっていたのだ。
「しのぶ様、産婆さんが見えましたよ!」
アオイちゃんが診察室へ顔を出し、産婆さんの到着を知らせてくれる。
「はい、じゃあ行きましょうか?」
まだ、頭が上手く回ってない私は胡蝶様に連れられるまま診察室から、奥の和室へと移動した。