第4章 君が笑顔の日【不死川実弥】
昼近くなり、実弥様を起こそうと寝室へ向かう。
『実弥様、そろそろお昼です。昼食のご用意も出来てますよ。』
まだ眠いのか、んー…とかう"ー…とか言って目を擦っている。
まるで小さな子どものようでなんとも可愛らしい。…本人に言ったら怒るけど。
「…身体の具合どうだァ?」
『はい。問題ありません。至って健康ですよ、さ…起きましょ』
腕を引こうとする私の手は、逆に実弥様の方へ引かれてしまいいとも簡単に布団へと倒れ込む。
『さ…っ、実弥様!?…ーーっぅん!?』
視界は反転させられ、布団へ押し倒される形になっている私。唇を割り舌が口内へと侵入してきて絡めとるように蠢く。
『…っ、んぅ…ぁ…ッ…』
銀糸を引きながら離れる唇。
「抱きてぇんだが……」
強く、獲物を狙い定めるような視線。臀部に押し付けられる昂りが熱を持つ。
その視線に応えるように身体は熱くなり、子宮が疼くようなもどかしさに僅かに腰が揺れる。
が…ーー。
何かいつもと違う、違和感がお腹に走る。
『さ…実弥様…?』
「どうしたァ?」
その手は着物を脱がそうと懐から手を忍ばせている。
ふと、その指が胸の頂に触れた瞬間…
『!!…っ、痛ッ…』
ピリっとした痛みが胸全体に走ったのだ。
痛いと口走った私に実弥様も驚いた顔をして、さっと手を引いた。
「!…悪りぃ…でも、どうした?…痛いのか?」
『すみません…少し…。それに…お腹も…変に引きつれるよう…な…?』
2人して困ったように首を傾げ合う。
ただ、私の身体が何かいつもとは違う。それだけは互いに感じていた。
「……医者に行くかァ?」
『そんな、おおけげさな…』
そう告げた途端、嘔気が込み上げてくる。
『!…ーーうっ…ッ…』
口元を抑え、涙目になりながら嘔気が治るのを待った。実弥様は驚きつつも背を摩ってくれている。
「今すぐ胡蝶の屋敷に行くぞ」
嘔気がようやく治まった頃、実弥様はそう言うと身支度を整え始めた。
『そんな、胡蝶様のお手を煩わすなんて…』
「…どっからどうみても具合悪いだろ。ちゃんと診てもらえ。…心配なんだよ。」
そう言われてしまっては退路がない。渋々納得し、お昼も召し上がらないまま胡蝶様の屋敷へと2人で向かった。