第4章 君が笑顔の日【不死川実弥】
朝露降りるまだ夜も明けきらぬ秋の朝。
そろそろ、夜警を終えられ実弥様が帰ってこられる。
朝ご飯の支度に取り掛かろうと身を起こしたが……ーー。
身体が恐ろしく怠く、眠い。眠いのはいつもの事だが、いつもの眠気とは違い、身体が起こせない程に眠いのだ。
(…おかしい。体調でも崩してしまったのかしら…)
起きなくちゃ…と思ったところで意識は途切れた。
「…、…ーー。…紗英…?」
『…さ…実弥、様…?』
寝惚けた虚な視界の向こうで、実弥様が少し心配そうな顔をしている。
ぼや…っとしていた意識が急に覚醒し、飛び上がるよう身体を起こした。
『すみませんっ!お戻りだったんですね!すぐ、朝ご飯の用意を…』
「いや、朝飯はいい。それより…どうしたァ?珍しいじゃねえか。」
『……起きられなくて…。すみません…。』
危険な任務から今日も命あって戻られたというのに…私ときたら朝起きられず寝坊して、挙句実弥様に起こされるって……
こんな朝は結婚してから一度だってなかった。
…やっぱり体調が良くないのかしら…。
「…寝るかぁ。」
ゴロンと私の横に寝転がった。
「…お前も。」
『いえっ、私は起き…ーー!』
起こそうとした身体は、大きな腕に阻まれすっぽりと腕の中に包まれている。
『いけませんよ…家のこと、しなくちゃ…』
「今日くらいしなくたって、死にやしねぇだろ」
『でも……』
「…言い方を変える。このまま隣で寝てくれ。…お前がいないと眠れねえ。」
…嘘つき。いつも私がいなくても寝てるじゃない。
視線を絡ませて、更に抱き寄せられると額に軽く口付けられる。
『うそつき…』
「なにがだァ?…寝るぞ」
この期に及んで、まだ起きなきゃ…と抵抗しようとしていた私の意識は呆気なく其処でついえた。
小一時間程、寝ただろうか。ふと目が覚めれば、先程までの怠さや眠気はなくスッキリといつも通り起き上がれた。
隣では、実弥様が熟睡している。
お腹に絡まる腕をそっと離し、私はいつもより遅い朝の支度を始めた。