第17章 贈り物を貴方に【悲鳴嶼行冥】
欲しいもの……
言うならきっと今しかない。…モノ、じゃないけど…
でも……
心臓が痛いほどドキドキしている。うるさいほどに耳に、頭にその拍動が響く。
『……先生……』
「ん?」
『…先生、が…良い…です。』
ギュッと目を閉じて俯いたまま、そう告げた。
私の頭を撫でていた先生の手がピタッと止まる。
うん…動揺させてる…わかります。急に言ったもんね…。
でも、ごめんなさい……恥ずかしいけど、どうしようもなく恥ずかしいけれど…やっぱり…先生に、触れたい…。
意を決したように目を開け、先生の顔を見る。
先生の顔は…真っ赤で、困ってるみたいに眉を下げていた。
『…っ、私…20歳になったよ、先生……。…先生のもっと近くに行きたいし…、触れて欲しいです…っ…ダメ…ですか……?』
最後の方は凄く小声になってしまう。反応が返ってこなくて…また俯いてしまう。
…はしたない女だと思われたかな…嫌われたかも知れないと思えば、薄ら涙が浮かぶ。
私の頭を撫でていた大きな手が頬に降りてきて、ゆっくりと指の腹で頬を撫でられる。
『…っ、!?』
擽ったくて顔を上げれば、優しく微笑む先生の顔がすぐ近くにあった。
「…それは、抱いても良い…ということか?」
ゆっくり頬を撫でながら、そう問われる。
『……っ、は……はい……、抱いて…欲し…っ!!?』
言い終わるより先に先生の大きな身体にキツく抱き締められてしまう。…大きな胸板…、先生の心臓の音が聞こえる…大きな音…、それに私と同じくらい、いやきっと…それ以上に早く打つ鼓動。
先生も同じ気持ちだったの……?
『…緊張…してますか?』
「ああ。…すまない…。」
『ううん。…嬉しいです。』
「嬉しいのか?」
『先生も…、私と一緒で嬉しい…』
抱き締め返そうと腕を背中に回してみたけれど、その大きな背中に私の腕は回りきらない。
キュッと先生のTシャツを握り締めれば更に抱き締められた。
「…紗英…、大事にする…。…お前を抱きたい…」
『…、はい…抱いて下さい…』