第17章 贈り物を貴方に【悲鳴嶼行冥】
「美味い…」
相変わらず号泣しながら私の作ったご飯を食べてくれる悲鳴嶼先生。
『泣くほど美味しいですか?良かった!まだありますよ、おかわりします?』
「いただこう。」
米一粒残されていない綺麗な茶碗を差し出され、思わず笑みが溢れてしまう。何を作ってもそうだけど、いつもおかわりして綺麗に完食してくれる先生が本当に好きで堪らない。
『先生、いつも綺麗に完食してくれるから嬉しいです。』
「紗英の作るご飯は美味しい。…毎日食べたいくらいだ。」
…後ろ、向いてて良かった…。
炊き込みご飯を茶碗によそいながら、そんな風に言われて…今間違いなく、顔真っ赤だと思う。…耳まで熱いから隠せてないかもしれないけれど。それでも…真正面を向いてそんな事言われたら…きっと恥ずかしくて、どうにかなってしまいそう。
…毎日。…そんな、未来を想像して良いんだろうか?
私が、毎日…先生の隣にいる未来を。
『…っ、もう…先生、大袈裟!はい、どうぞ。』
照れ臭くて少し笑って誤魔化しながらお茶碗を差し出せば、心なしか先生の顔もほんのり赤くなっている。
「あ、…あぁ。ありがとう。」
茶碗を渡す時、不意に指先同士が触れてピクっと震えてしまい咄嗟に手を引いてしまう。
幸い茶碗を落とすことはなかったけれど…、どうしよう…変に思われたかも知れない。…こんな些細な事でドキドキしていたら…これから『先』…、私…大丈夫だろうか…?
「…紗英?」
私の様子を少し心配そうに見上げる悲鳴嶼先生に、これ以上心配かけさせないため、何でもないの!と笑い慌てて椅子に座った。
程々に夕飯を食べ終え、先生が後片付けは私が…と言い出すものだから丁重にお断りして、ソファへ追いやりテレビでも観てゆっくりしてて下さい!!と言えば、少々しょんぼりしながらも渋々納得して大人しくテレビを観ていた。
洗い物をしている間、時々水音の向こう側から微かに先生の笑い声が耳に届き、口元がどうしようもなく緩んでしまう。
『幸せ』…この一言に尽きるな、なんて…思った。