第17章 贈り物を貴方に【悲鳴嶼行冥】
…彼氏が……全然、手を出してくれない。
キメツ学園を卒業し、悲鳴嶼先生と公然とお付き合いできるようになったまでは良かった。とても良かった。
それから2年。
一緒に猫カフェ行ったり、買い物したり、外で手を繋いだり。時々だけど、お泊まりだってしている。
とはいえ、お泊まりしてもただ…一緒に寝るだけで、何事もない。超がつくほど平和。
…強いて言えば、頬にキスしたり軽く抱きしめられたり。
とにかく。…私としては、もう少し…いや、もう少しと言わず…悲鳴嶼先生と大人の関係になりたいの。
『…っ、先生…明日、お泊まりしても良いかな?』
ほぼ毎日の日課、就寝前の先生との電話でお泊まりを提案してみた。
「…ああ。それは構わないが。」
『じゃあ、夕飯は私が作りますね!何が食べたいですか?』
「…炊き込みご飯か食べたい。」
『ふふっ、…好きですね!わかりました、明日キッチンお借りしますね!』
「ああ。楽しみにしている。…今日はもう寝なさい。」
『…はい、おやすみなさい。…また明日。』
「おやすみ。…また、明日な。」
通話ボタンを押し、はぁーーー……と大きく溜息を溢す。
…お泊まり、取り付けちゃった。
先生、いつもと変わらないテンションだったな。…きっと私だけこんなにドキドキしてるんだろうけど。
そっと自分の頬に触れて見れば、熱くて…心臓が痛いほどドキドキして耳の奥までその拍動が響く。
…きっと先生はいつもと同じお泊まりを想定していると思うけど、今回ばかりは『いつも』と同じじゃ終わらせられない。
だって、先生……
明日は、私の20歳の誕生日だよ。