第13章 桜色に染まれば【煉獄杏寿郎】
赤く染まる杏寿郎さんの顔。…提灯の明かりに照らされてそう見えるだけか…それとも…?
「っ、…俺は!…あの時からずっと紗英が好きで…っ…その…嫁に迎えられた事、嬉しく思っている!…幼馴染みで許嫁という立場だったが、ずっと前から紗英に惚れていた!」
行き交う人々が杏寿郎さんの大声に振り返り、微笑ましそうに笑っている。
突然の告白に固まってしまい…、花冷えする夜なのに身体が火照って熱い。
「…紗英が背伸びして嫁に相応しくなろうとしてくれているのはわかっている。…けど俺は…あの日のように、天真爛漫で…杏寿郎くんと呼んでくれる紗英が好きだ!」
『……杏寿郎くん…。』
「…いいんだ。紗英は紗英のままで。無理して背伸びしなくても、俺はありのままの紗英が好きだ。…あの頃のように接してはくれないだろうか?」
…見抜かれていたんだ。私が無理して口調を変えてる事も、嫁として相応しくあろうとしていることも。
『…ごめんなさい…。』
「謝る必要はない!紗英がお母上の言いつけを守って、そうしてくれているのはわかってるが…どうも俺が慣れなくてな。すまない…。」
泣き出しそうな私の手をしっかりと握り、微笑んでくれる。
『…変わらなきゃと、思ってたの…。子どもの頃の振る舞いのままだといけないと思って。幼いままの頃と同じだから…床入りもないのかなって…。』
「いや…っ、それは……!」
痛いほどに手を握りしめられ、驚いて杏寿郎くんを見れば提灯の明かりのせいではない程に赤面していた。
「…それは…、俺が…色々考え過ぎて…手が出せなかっただけだ…。すまん…。」
杏寿郎くんらしからぬ小声でボソボソと小さな声で呟くように話した。
その姿が何やら可愛くて…、どうしようもなく嬉しくて
人目も気にせず抱き付いた。
「!!…っ、紗英!?」
『…好き。大好き、杏寿郎くん。…私も、あの日からずっと…杏寿郎くんの事が好きよ!』
桜の木の上で不安気に涙を溜めていた私。同じように登ってきてくれて、ずっと手を繋いでいてくれた。
あの日からずっと…杏寿郎くんだけだった。