第12章 目印を探して【我妻善逸】
ゆっくり、時間はかかったけど紗英ちゃんは回復して、松葉杖をつきながら表に出られるくらい元気なった。
「紗英!随分良くなったんだな!良かった!」
「おい!!瓶底眼鏡どうした!!?何でも良いが、おはぎ!!作れ!!」
炭治郎も、多分伊之助も…紗英ちゃんの回復に喜んでいる。
『ありがとう、炭治郎さん、伊之助さん。おはぎ、今度作るからね!』
ニコニコと笑って2人の相手をしている。…漸く…『日常』に戻りつつあった。…でも、紗英ちゃんはもう少し歩けるようになったら…此処を出て行く。
「…辞めるんだってね。…鬼殺隊。」
炭治郎がゆっくりとした口調で問いかける。
『…うん。…さすがに…難しいから。…里に、帰るよ。』
「待ってる家族がいるんだな。」
『…親は鬼に殺されちゃっていないんだけど…、父方の祖父母がね。いてくれるから…。家業手伝いながら…継いでいけるように、これからは頑張るよ。』
「そっか。…頑張れ、紗英。どんな事があっても、これを乗り越えたんだ。…きっと何があっても紗英は大丈夫だ!」
炭治郎が紗英ちゃんの頭を撫でながら、笑顔で話す。
「……『家業』って、なんだ?」
伊之助が首を傾げながら、本当…的外れな事を突然聞いてくる。
「家業ってのは、家でやってる仕事のことだよ!本当何にも知らない奴だな!」
呆れながら俺が答えれば、うるせえ!!!と頭突きしてきやがる。
本当!本当そういうとこだよ!!
『あと7日もすれば、此処を立つから…それまでにおはぎつくるね、伊之助さん。』
「おう!!」
…あと、7日。
せっかく…好きだと言えたのに…、あと7日したら里に帰ってしまうなんて。
俺の恋って…やっぱりとことん報われないんだな…。
こんな仕事だしさ。いつ死ぬかわからないし、嫁に来て欲しいとも…言えないし。…いや、散々言ってたけどね。いざとなると…言えないわけよ。
本当、臆病者だよ…俺って奴はさ。
『善逸さん…?どうかしたの?』
心配そうに覗き込む、大きな瞳。
「なんでもないよ!大丈夫!」
そう答えるので、精一杯だよ…俺。