第12章 目印を探して【我妻善逸】
『……ありがとう……。』
そう言って微笑んで…また目を閉じた。
「!!…っ、紗英ちゃん!!?」
…眠っただけか…。ビックリさせないでよ…もう…俺、ノミの心臓なんだからね…。
安心したみたいに…穏やかな顔で眠ってる。
……俺、好きって…言っちゃった…?
言ったよね。間違いなく。…ありがとうって言ったもんね、紗英ちゃん。
……こないだまでさ、禰豆子ちゃんの事…大好きだって思ってたんだよ。…絶対、他の子に目移りなんてしないって…思ってたんだ。
それなのにさ…俺…、いつの間か紗英ちゃんの音が聴こえないと安心できなくなってんの。
馬鹿みたいだって、笑ってくれて良いよ。
いつでも、いつまでも…鈴を転がすような音をさせて、俺の横で笑っててよ。
「……好きだよ。…遅くなって、ごめん。」
眠る紗英ちゃんの…火傷の痕が残る頬を撫でる。
きっと…一生、痕が残るんだ。
昔の人は…上手く言ったもんだな、痘痕も笑窪…なんて。
本当にそうだよ。…好きな人の傷痕なら…どんなだって、長所にしか見えない。
しばらくしてから…頬を撫でる手を収め、…しのぶさんとアオイちゃんを呼びに行った。
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「はい。…大丈夫そうですね。…ただ、隊士としての復帰は難しいでしょう。」
診察の間、病室から追い出されてたけど…ようやく招き入れてもらって、話を一緒に聞かせてもらっている。
『はい。…自分でもわかっています。…目も…左目は潰れてしまったし…、残った右目も元々視力が悪いですから…隠としても、これ以上…鬼殺隊でお役に立つのは難しいです。』
自分の状況を冷静に分析して、淡々と話す紗英ちゃん。
…これ以上ないってくらい…いま、辛い状況だよな。
それでも、笑って…生きていこうとしてる強さが…凄いよ。本当に凄いと思うよ…。
『…生きてるだけで、有り難いです。』
右目は弧を描き、俺たちに笑いかけてくれた…。