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君がため【鬼滅の刃】

第12章 目印を探して【我妻善逸】




待ってよ。この流れで紗英ちゃんの話が出るってことはさ…つまり…。


「安積が重症なんだよ。…多分、もう隊士として復帰は無理だと思う。」


村田さんが残念そうに、小さく呟いた。


誰かが何か言葉を発するより前に…俺の身体が勝手に動いた。


嘘だろ。誰か冗談だって言ってくれよ。頼むよ。

そりゃさ、…確かに迷惑だったし…可愛くないし…関係ないって…今言ったところだけどさ…。



こんな結末になって欲しいわけじゃないよ。


俺なんかより…俺みたいな奴より、よっぽど紗英ちゃんの良さをわかってくれる奴がいると思うからさ。




だから……



重症だなんて、嘘だって…冗談だって言ってくれよ。


最後に見た、瓶底眼鏡の奥にある瞳が弧を描き…涙で濡れる姿が思い浮かぶ。




しのぶさんの屋敷に着いて、急いで病室へと足を進めた。



「…紗英ちゃん…?」


小さく声をかけて、病室に入れば…しのぶさんが点滴を調整しているようだった。



「善逸くん?…どうかしましたか?」



白いベッドの上に寝かされる…白い…紗英ちゃん。


命の音が…今にも消えてしまいそうな程、小さい。



「あの…その、紗英ちゃん…」

「お知り合いでしたか?…見ての通り、重症です。…ここ数日が山でしょうね。」




白く見えるのは…身体中包帯を巻かれているからだろうか。


頬には大きな火傷の痕があった。



「…火傷…。」


「残念ですが、残ってしまうでしょうね。…隊士としての復帰も無理でしょう。片目も潰れていますし。」



鈍器で頭を殴られたようだ。…頭割れそうなくらい痛いし…何も考えられない。



頼むよ。…誰か、嘘だって言ってくれよ。


可哀想じゃん…顔にこんな大きな火傷の痕が残って…目も見えなくなって…男だって、まあまあ動転するよ…こんなの。…女の子だよ?まだ嫁入り前じゃん。


「…紗英ちゃん……っ」



紗英ちゃんの冷たい手を強く握りしめても…、紗英ちゃんが……俺の手を握り返してくれる事はなかった。





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