第12章 目印を探して【我妻善逸】
容姿の事なんてさ…自分が一番わかってるよね。
俺だって、そんなたいした面構えじゃないよ。
男前だったら良かった…なんて、何度思ったかわからない。
容姿が好みじゃないって女の子に振られた事だってある。その時、むちゃくちゃ辛かった。生まれ持ったものを否定されると、なんだか心を殺されたような気分になるんだ。
そういうの…。知ってたはずなのに。
自分がされて嫌だったこと、平気で言ってしまうなんて…
やっぱり…クズだよ、俺。
それから…紗英ちゃんの姿はパタリと見かけなくなった。
任務で一緒になる事もないし、しのぶさんの屋敷で見かけることもない。
「おい!紋逸!瓶底眼鏡どうした!!?」
「だーかーらー!!!俺は善逸だって何度言えば覚えるの!?」
「どうでもいいだろ!!それより瓶底眼鏡だ!あいつのおはぎが食いたい!!!」
「知らないよ!自分で探しなよ!俺に聞かないでくれる!?」
伊之助は時々、紗英ちゃんの作るおはぎが恋しいようで…どこにいるんだ!!?と喚きながら尋ねてくる。
「でも、本当に最近見かけなくなったな。遠方で任務に就いてるのかな?」
伊之助とギャイギャイ言い合ってるいると、間から冷静な声で炭治郎が割って入ってきた。
「知らないよ。…俺は、関係ない。」
関係ない。…可愛くないって言っちゃった手前…なんとなく心が痛むけれど…やっぱり俺は関係ない。
紗英ちゃんが…どこで何してるかなんて…。
「おう。久しぶりだな。」
サラサラの髪をなびかせながら、やって来たこの人…
確か…。
「お久しぶりです!村田さん!」
炭治郎が元気よく挨拶して思い出した。あの蜘蛛山の戦いの後…病室に来てくれた人だ。
この人、相変わらず爽やかだな…髪だけ。
「また負傷しちゃってさあ…俺は大した事ないんだけど、一緒に同行してた隊士が重症で、胡蝶様に世話になってるんだ」
「そうですか、…大変でしたね。ご無事で何よりです。」
「それこそ、お前ら。安積と仲良かったんじゃねえの?」
「おう!!紗英は子分だぜ!!」
伊之助が前のめりで答えている横で、俺は嫌な汗が背中を流れる…。