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君がため【鬼滅の刃】

第11章 櫛を贈らせて【竈門炭治郎】




『炭治郎くん、ご飯の用意整いましたよ』


いつもの、可愛らしい笑顔で縁側に座っていた俺に声をかけてくれる。


「ぁ、…はい!すぐ行きます!」


何の心境の変化だろうか…。元々俺の前で絢瀬さんの話をすることは殆どなかったけれど、今では全く口にしなくなった。

時々俺から聞いても、適当にはぐらかされて話してもらえない。



俺が守っていくと、あの日墓前で誓ったのに…見えない壁が想像以上に高い気がして、その未知数に…不安になる事もある。

そんな自分の弱さが情けなくて…何度、紗英さんに触れても、今この髪に、身体に触れられるのは俺だけなんだと頭では分かっていても…、…時々触れる事すら躊躇ってしまう。





『…口に合わなかった?』


あまり箸が進んでいなかった俺を心配するように、紗英さんが聞いてきた。


「!…いえ!美味しいですよ!…すみません、ちょっと考え事してました。」


『そう。…良かった。』



少し心配そうにしつつも、首を傾げながら頷いてくれる。


これ以上、紗英さんに不審に思われないように勢いよくご飯をかき込んだ。





ーーーーーーーーーー



「気にし過ぎだよ、炭治郎は。単に雰囲気変えたかっただけじゃないの?」


善逸に紗英さんが髪を切っていた事や、このところモヤモヤしている事を話したら、惚気かよ!!!と怒りながらも真面目に話を聞いてくれた。



「うん、…そうだと…思うけど…なんかさ。」



歯切れ悪く答えてしまう。


「死んだ人間には一生敵わないよ。ましてや紗英さん、その人と結婚するつもりだったんだろ?…炭治郎の事好きになってくれただけでも奇跡だよ。」



そうだ。…一緒に居ると、つい…忘れてしまう。

あの日、俺と一緒に居たいと言ってくれた紗英さん。


それが、どれだけの気持ちを乗り越えた上での答えだったのか。


紗英さんを好きな気持ちに変わりはないのに…すぐ不安に負けそうになる自分が恥ずかしい。



善逸と走り込みを終え、今日は紗英さんの家ではなく蝶屋敷へと2人で帰った。






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