第10章 飴を溶かす【伊黒小芭内】
…小芭内が…?……私を、…好き?
「甘露寺と買いに行ったというが、お前の飴がそろそろ無くなりかける頃だと思ったからだ。あの後、すぐに任務が入って仕方なく甘露寺に預けたまでで。…邪推する必要などない。」
『………そう、ですか。』
「…なんだ。まだ不服か?そんなに俺と買いに行きたかったのか?」
『…はい。』
小芭内の顔が途端にみるみる赤く染まる。
…この人も照れたり…?…するんだ。
なんだ、私だけじゃないのね。
「…安積、お前……なんで『今』素直なんだ。」
『…いけませんでしたか?』
小芭内は赤面したまま、小さく溜息を零し…顎を取る手を力が込められた。
「…馬鹿な勘違いをして俺を苛つかせた罪は償ってもらうぞ。」
『…な…ッ!…んぅ…、ん…ぁ…っ』
噛み付くような口付け。…息をつく暇も与えない程に口内を舌が這いずる。
歯列をゆっくりなぞられれば、身体の奥深くが熱く焦ったい疼きに支配されてゆくようだ。
『んん…ぅ、ぁ…ゃ…ふ…、ぅ』
疼きを逃そうと、身体を捩ってみてもしっかりと抱かれた腕に阻まれる。比較的、力が弱い方だと思っていたのに…。こんな時ばかり力強くて…不意に感じる「男」の部分が更に熱を上げてゆく気がする。
ぴちゃ、ちゅ…と互いの唇から漏れる水音。
此処がどこで、とか。…縁側なのに、とか。
誰かに聞かれて、なんなら見られていたら…どうしよう…と思うのに…思えば思うほど恥ずかしいのに、気持ち良くなってしまう。
徐々に遮断されてゆく思考回路。
このまま小芭内に抱かれてしまいたい…。
『…っ、…ぉ…小芭内……ッ』
僅かに唇が離れた隙に呼びかける。
「…なんだ?」
『…抱いて、…欲しいです。』
呟くように口にすれば、小芭内が私を抱き上げ立ち上がった。
『!!、やっ…!?ちょっと…?』
無言で後ろの部屋の襖を開ける。どうやら小芭内が宿泊する部屋だったようで部屋の隅で丁寧に畳まれた羽織の上に鏑丸がその身を丸めていた。