第8章 姉の結婚【煉獄杏寿郎】
『やめてくださいっ!駄目です…杏寿郎さん…!』
震える声が耳に届く。
「…大きな声を出しては、父上と千寿郎に聞こえてしまいますよ?…こんな姿、2人に見られたいのですか?」
どちらかが来て、責められるのは間違いなく俺の方なのに。こんな言い方、ずるい事くらいわかっているのに。
それでもこの腕に留めてしまいたい。…今夜だけは。
『…お願いっ…、やめて…』
どんな言葉を言われても、もう止められない。
露わになった背中に舌を這わせ、乳房に手を伸ばす。
『ッ…!!、ふ…ぅ…、!』
指先で乳首を弾けば徐々に硬さを増してゆく。
半端に解いていた帯紐を取り去り、夜着を脱がせてしまえば傷ひとつない、白く艶めかしい裸体が浮かび上がる。
性急に秘部へ手を伸ばせば既にしっとりと湿度を纏う其処に俺の熱は急速に中心へ集まってくる。
「…濡れていますよ。感じましたか…?」
耳元で囁くように告げながら、耳介を舐めれば小さく喘ぎながら涙が頬を伝う。
『いやぁ…っ、杏寿郎さん…なんで…ッ…?』
何故…?なんて…。そんなの…紗英が愛おしくて堪らないからだ。合意の上でない行為だと言う事は承知だ。もう二度と…弟と呼んでもらわなくて構わない。柔らかな微笑みを向けられる事がなくなっても…。
「…好きなんだ。…紗英が俺を「弟」としてしか見てない事もわかってる。それで良い。…今だけ。…今だけは、「男」としてみて欲しい。」
こう言えば…優しい紗英は拒みきれない。弱さにつけ込んでいるだけの狡い男だ。どんなに最低だとしても、この腕に抱くことを何度も、何度も想像した。
紗英の身体を反転させ上を向かせれば涙で頬が濡れている。
「…絶対…俺を許さないで下さい。…一生。」
まるで呪いだ。一生、俺を忘れるなという。
憎んで恨んで、一生忘れないでくれ。
俺のことを。