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Amor vincit omnia__愛の勝利

第9章 共に歩こう(土方十四郎)




それから1週間して頼華は退院した。が、どうやら屯所で働いていたことも忘れているらしい彼女は暫く銀時のいる万事屋に身を置くことになった。初めはそれに賛同しなかった土方(銀時から襲われると思って)だが神楽や新八の声で渋々了承した。
それからまたどれくらいの月日が経ったのか、気づけばもうすぐで半年になっていた。幾ら記憶障害とはいえ、余りにも遅すぎるのでは、と。
相変わらず彼女は土方を思い出すことなく、土方と会っても少し他人行儀だった。土方でさえも、音を上げたりはしていないものの、内心かなり疲れ切っていたから。


そんな折。暴漢が街中にいるとの通報で土方、沖田は歌舞伎町にいた。思ったよりもかなり数がいる。これは応援をさすがに呼ぶかと無線機に手を伸ばした時だった。


「…!!」
「…て、…!」

すぐ横の路地から男女の言い争いが聞こえる。女の声には聞き覚えがあった。

「ちょ、土方さんどこに…!」

後ろをついてくる沖田より先に身体が動いてそちらに向かうと言い争うのは通報があった暴漢のうちの一人だろう男と頼華の姿だった。


「おー、真選組のお出ましってかぁ?」
「お前ら全員切ってやろうか?」
「おーこわ、まぁ殺れるならやってみ」


そう男は言うと手元をチラつかせた。男の手には拳銃が。
頼華を突き放した男はそちらに銃口を向けた。
叫ぶより先に土方は頼華の元へ走る。


「助けてぇ…!…十四郎……!」


頼華の言葉に驚きつつも、いつぶりだろうか呼ばれるのは、と内心思いながらも土方は頼華を抱き寄せる。弾丸は土方の肩を貫いていた。


「…十四郎……!!!」

悲しげな頼華の叫びが木霊する。

「お、まえ…思い出したのか…」
「なんか死ぬのは怖いって、絶対に死にたくないって、そう思ったら叫んでたっ…それより十四郎が…!」
「…そうか、よ、かった…」
「え、十四郎…?十四郎!!!」

嫌ァァァと悲痛な声がするのを他所に土方は意識を飛ばした。



「…また、ここか、」

目を覚ました土方はよくもまぁ大江戸病院には世話になることだなと思った。

「土方さん、生きてましたかぃ」

目の前にはニヤリと笑う総悟の姿があった。
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