第9章 共に歩こう(土方十四郎)
「こんな所にいたんですかぃ、土方さん」
「…総悟か」
「土方さんが出ていってすぐに先生が意識が戻ったからとか何とか言って、頼華の検査したみたいですぜ」
「先生が呼んでまさぁ」
未だに土方の心に刺さる頼華の言葉は取れることは無かった。
「…記憶、障害?」
「あぁ、どうやら彼女は一部の記憶を無くしているみたいだよ」
医者によれば彼女が数日食事を取らなかったことを忘れていた事からもしかして、と思ったらしく。また、彼女が検査に行っている間その原因を知らないかと銀時たちにも聞いたらしく。
「恐らくその原因は君だろうね、土方くん」
と医者はいう。そして続けて話し出した。
「頼華ちゃんとは良い雰囲気だったみたいだね。でもそれが君の過去が絡んでその事に彼女は相当ショックを受けたんだろうね。それで数日真面に食事を取らなかった。君を想う余り身体が拒絶反応を起こして発熱、って所だと思うよ。」
医者の言葉は頼華の気持ちそのものを代弁しているように思えて。全ては自分が仕出かした過ちからなのだと土方は悟った。そしてもう頼華から離れよう、そう思った時
「きっと君のことだから彼女から離れればそれでいいとか思ってるんじゃない?」
「…!」
「図星、だね。駄目だよ、離れちゃ。あと、」
彼女の記憶は君次第で戻るんだから、と医者は言った。
とりあえず先ずは名前を覚えてもらうといいとの事と、決して無理矢理に記憶を戻しては駄目だと医者に言われ頼華の病室へ向かう土方の足取りは何時になく重かった。
病室を覗くと笑顔で沖田や銀時と話す頼華。その笑顔が今は自分には向けられないのだと思うと土方は目を逸らしたくなった。
「あ、土方さん」
「…総悟。近藤さんは?」
「頼華の入院の手続きに行きやした」
「…そうか。」
ふと、何気なく頼華に目をやると目が合ってしまった。しまった、と土方は思う。彼女はというと
「あ…えっと、初めまして?龍ヶ崎頼華です」
「……真選組副長、土方十四郎だ」
「へー!あなたが鬼の副長さん!」
鬼の副長、その通り名を以前の彼女なら鬼じゃないのに!と嫌って口にすることは無かったはずなのに。