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Amor vincit omnia__愛の勝利

第9章 共に歩こう(土方十四郎)



漸く担当医に呼ばれ診察室に入ると、処置室の方に寝かされている頼華。まだ目は覚めていない様子だ。

「で、どうなんだよ先生」

土方は焦るように医者に問う。

「心配ないよ、栄養失調で免疫下がったみたいだね」
「…そうか」
「解熱剤を注射したしもう少ししたら熱は下がるよ。ここ数日、食事が取れていなかったのかな?」

まぁ1週間くらい入院すれば大丈夫だよ、と続けた。


病室に運ばれベッドの上で眠る頼華。医者の言葉に安心したのか、銀時と沖田は眠ってしまっていた。

「はぁ…ここ病院だぞ、全く…」
「まぁまぁ、トシ。許してやれ安心したんだろう」

自分は頼華が目が覚めるまでは安心できないと思った。頼華が何気なく自分に好意を抱いてくれているのは知っていたし自分もどこか彼女に惹かれていた一面はあった。けれどやはり、真選組として、いつ死ぬかもわからない明日死ぬかもしれない身で彼女の思いを受け入れられない自分もいた。これではミツバの時とまるで何ら成長してないのだが。


「…ん……」
「!頼華…!」

彼女は漸く目を覚ました様子で。先程まで荒かった呼吸も落ち着いている。土方は内心ほっとした。

「気づいたんですかぃ、頼華」
「あ、総悟……近藤さんに、銀ちゃんまで……あと」

その後に続くのは土方の名前だろうと誰もが思っていたがそれは皮肉な現実を突きつけた。

「……あなた…誰ですか…?」
「…は?」
「頼華、寝ぼけてんのか」
「酷いなー銀ちゃんは。至って真面目なんだけど」

そう言う彼女の目は間違いなく事実だった。
土方は鈍器で頭を殴られたかのような感覚に陥った。
自分のことだけを忘れている…?何故…??
そんな土方を横目に近藤は頼華の意識が戻ったことを伝えるべくナースコールを押した。



「うん、熱もないみたいだね。」
「お騒がせしましたー!」
「ここ数日、食事を取ってなかったようだけど?」
「え?食事…?んー…何でなんだろう、わかんないなぁ」

いつもの様に話す頼華を他所に土方は病室にいたたまれなくなり屋上で煙草に火を付けた。息を吐くと紫煙がすーっと空へ溶けていく。しかし土方の心は晴れなかった。

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