第68章 不安分離症(ゾロ)
(ゾロside)
ライカと共に、トコの命を狙う人斬り鎌ぞうから逃走していた際にはぐれてしまった。
いつもならライカの手を引いていたはずなのに、後悔してももう遅かった。
人斬り鎌ぞうを倒せたのは良かったが、生憎おれは深手を負ってしまっていて。
誰かがおれを手当てしてくれていることだけは分かっていた。
ふいに揺さぶられ、喧しい声におれはむくりと夢から覚める。
そこには、数時間前に見た彼女とは違う、絶望的な顔をして走り去っていくライカの姿が見えた。
「…は?」
ブ「ちょっとゾロさん!浮気ですか!??」
「はぁ??意味わかんねぇ…」
ブ「やっとライカさんと見つけたと思ったのにあなたという人は!」
横にいる見知らぬ女と、いつの間にか包帯を巻かれているおれ自身の姿、そしてブルックのその一言でおれは全てを理解した。
「浮気なんかするわけねぇだろ」
おれはすぐにそばに置いてある刀を腰につけ、立ち上がった。
ひ「まだ動いては駄目です!」
「気にすんな。おい、待てライカ…!」
横にいる女に目もくれず、おれはライカが走っていった足跡を辿って彼女を追いかけた。
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「どこに行きやがった、ライカのヤツ」
雪は途中で途切れていて。彼女の足跡も途中でなくなってしまった。おれはただ、弁解したくて。あんな顔、させたくなんてなかったのに。
「…見つけた」
ふいにライカの気配を感じとり、その方向に足を向ける。一刻もはやく。彼女に会いたくて。
「…こんな所に居たのか」
「っ…ゾロ、」
橋の下、そこに蹲っているライカを見つけた。声をかければぴくりと反応しておれの名を呼ぶライカの顔は、苦痛に歪んでいた。
「…なぁ、」
「…や、だ…っ」
手を伸ばせば、パシンと跳ねられた。そりゃそうだ。あんな光景見せられれば誰だってこうなるだろう。
こいつは今、おれを拒絶しているのだと分かる。
「…頼む。話だけでいい、聞いてくれねぇか」
「…っ」
「…なにも反応しなくていい、おれの独り言だと思ってくれ。」
俺はライカの隣に腰掛けてゆっくりと口を開いた。