第67章 タカラモノ(玄奘三蔵)
「…痛むか?」
「平気だよ…玄奘の傷に比べれば」
「…俺は怪我などしていないが」
「だって玄奘、苦しそうな顔してる」
俺の頬に伸びてきた温かい手。すり、と俺は頬擦りしながら顔を彼女の手のひらに預ければもう片方の手が反対側の頬に当てられた。
「ごめんねはこっちのセリフだよ」
「…」
「避けられなかった私が悪いの。だから玄奘は何も悪くない。」
「…だが、」
「大丈夫、すぐ治るから」
そう言って近づいてきた彼女の唇が、俺の唇と重なる。
「…だからそんな顔しないで」
彼女はいつだってそうだ。
餓鬼の頃も、自分は怪我の治りが早いからと自分の身を投げ打ってでも俺を守ろうとする。
「…俺が頼華を守りたいんだよ」
「え…?」
「…もう絶対に傷つけさせねぇと誓う」
「…うん、分かった」
玄奘、一緒に寝よ。と、布団を剥いで俺を誘ってくる彼女に俺は素直に従った。
温かい温もりが、俺の冷え切った心を温めてくれる。
「…玄奘、」
「なんだ」
「…んーん、呼んだだけ」
「誘ってるんじゃないのか?」
「……ばか、分かってるなら言わないで」
耳の先まで赤く染る彼女に愛しさが増し、俺は彼女に口付けた。
啄むように何度も角度を変えて口付けを交わす。俺は彼女な口付けるときに、目は開いたままだ。
彼女の顔を、一瞬でも見逃したくないから。
ゆるりと唇を舐めれば開かれるそれに、俺は自分の舌をねじ込んで。深く絡め取れば、薄く開かれた彼女の目に色気を感じて俺の熱が一気に上がってくるのがわかった。
「ふ、ぁ…げ、んじょ」
熱を帯びた声で俺の名前を呼ぶ彼女に、漸く唇を解放してやれば軽く開かれた彼女の唇から吐息と銀色の糸が俺たちを結んでいた。
「…げんじょー?」
「…ふ、何でもねぇよ」
頼華のこんな顔、俺以外の誰にも見せられねぇし見せたくねぇな、なんて独占欲が俺の中を駆け巡っていた。
ふと、頼華の手が俺の手を誘導する。たどり着いたソコは、すでに覆い隠されている布が意味を成していないほどにぐっしょりと濡れ、女の匂いが漂っていた。
「…もう、ほしい」
普段自分からそんなこと言わない頼華の口から放たれた言葉に、俺はごくりと唾を飲み込んだ。