第63章 SS(色々)
田島悠一郎(おお振り)
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「あ!4番の人じゃん!」
「試合、見に行ったよ!今度また行くね!」
「え、俺有名人!あんがとな!!」
なんて。西浦の野球部が桐青に勝ってから、一気に有名人になってしまった田島くん。
入学したあの日、たまたま帰り際に野球部が練習しているのを見て、田島くんに一目惚れしてしまったのだけれど。ただ、同じクラスメイトってだけの関係で。実はそんなに話したことは無い。日直でたまたま一緒になったりするだけで、本当はもっと話したいのに。私にはその勇気がない。
「…はぁ。」
今日は学校のスポーツレクリエーションで授業はなくて。私はバスケに参加していて、もっぱら隣のコートには男バスがあってる最中で、応援団団長の浜田くんを応援しに来ている田島くんによそ見をしていたのだけれど。
「…あ!ちょっと、頼華!」
「……え?」
バチンとバスケットボールが頭に当たる。最悪だ。試合中なのに、余所見していた罰だ。
「頼華、大丈夫?」
「ちょっと痛い、かな」
心配して声をかけてくれた友人にそう返事する。
「龍ヶ崎、大丈夫か?」
「……へ?」
心配して私の周りにいるチームメイトや友人をかき分けてやって来たのは、まさかの田島くんだった。
「あ、な、なんで…」
「すげー音して見たらさー、龍ヶ崎の頭にボール当たったからなんか慌てて来ちった」
ニシシと笑いながら尻もちを着いている私を引き上げてくれる田島くん。
「ちゃんと冷やそ」
そう言って、コート外の壁際につれていかれてアイスパックを当ててくる田島くん。顔が、近い。
「龍ヶ崎、顔真っ赤」
「だ、って……」
どうしよう、前が見れない。
「…もしかしてさ、俺のせいだったりする?」
「…へ?」
「いやー、クラスで目が合う度に逸らされるから嫌われてんのかな俺って思ってて」
「…そ、れは」
「だけど、俺のせいで顔が赤いって思っていいの?」
なんて自惚れかな。という彼に、咄嗟に顔を上げた。
「俺、龍ヶ崎のことが好き」
「!??…な、んで」
「可愛い顔、誰にも見せたくない」
独占欲丸出しの俺を許して
そう言う彼に、私も好き。そう伝えれば、大好きな笑顔が目の前に降ってきた。
end