第63章 SS(色々)
水谷文貴(おお振り)
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「ふみきのぶぁぁぁぁぁか!!」
「そんなに言わなくても良くね!?」
「もう知らん!」
ぷんぷん怒って教室を出ていった彼女は幼なじみ。そして俺の好きな人。
「俺、なんか言ったか?なぁ泉ー」
泉「龍ヶ崎もあんな怒るんだな」
「うーん…」
昼休み。いつもの様に泉たちと飯食って、野球雑誌を花井が持ってきてたから見てただけなのに。なんでだ?
泉「…え、お前本当に分かんねーの?」
「え、マジで分からん」
阿「…だからクソレなんだよお前は」
「阿部ひどくね!?」
まーじで、よく分からん。なんであんなに怒った?俺、何か言ったっけ…
田「はいはーい!水谷が女の子かわいいって言ったから!」
「…え?そんなこと言ったっけ」
泉「お前なぁ…」
確かに、野球雑誌に載っていた他校のマネを見て、どことなく頼華に似てる雰囲気で。マネやってくれたらとか、応援してる頼華かわいい、とか思ってしまって。つい口に出たけれど。
田「嫉妬、ってやつだろ!ゲンミツに!」
「…嫉妬?」
阿「田島に言われるって、やっぱ阿呆だなお前」
「え、誰が誰に?」
花「…だーから!お前が雑誌に載ってる他校のマネみて”かわいい”なんて言うから、龍ヶ崎は嫉妬で怒ったってことだろうが!」
いい加減、気づけと花井に言われてやっと理解した。
「ちょ、俺…!」
泉「はいはいいってらー」
俺はすでに居なくなってる頼華を探すために教室を飛び出した。
「…いた。」
やっぱりここか。頼華は何かあると部室棟の裏に隠れてしまう癖がある。見つけた先には小さくしゃがんでいる彼女の後ろ姿があった。
「頼華、」
「…ふ、みき」
あー、泣いてる。俺のせい、だよね。でも、さっき花井に言われたことが嬉しくて仕方なくて。
「…俺、頼華がすき」
「っ…でも、雑誌の子かわいいって言った」
「あれは頼華に似てたからで…」
そう言えば目をまん丸くさせた彼女が可愛くて。
「…頼華も俺のこと好きって思っていいの?」
そう聞けばこくんと小さく頷いた彼女に愛しさが増した。
嫉妬は最大公約数
だいすきな彼女の嫉妬なら俺は喜んで受け入れるよ。
end