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Amor vincit omnia__愛の勝利

第63章 SS(色々)



阿部隆也(おお振り)
__________


「もうすぐ抽選会はじまるってのに、まだ戻ってこねぇのかアイツら…」

「ちょっと見てくるよ!」

「はぁ?男子便所だぞ!?」

「大丈夫大丈夫!」

「おい頼華!」


今日は夏大の抽選会。腹下してる栄口は兎も角、三橋は戻ってきてもいいはずなのにすでに15分は経過していた。
そんな弟を見兼ねて、なのか姉貴である頼華は俺の言葉も聞かずに三橋を探しに行ったのだけど。

「相変わらず自由だなー頼華」

「ほっとけ。俺が何言っても聞かねぇよアイツは」

「阿部も大変そうだなー」

なんて泉は俺の苦労を知ってか知らずかそう言いやがる。



「…遅せぇ」

頼華が三橋を探しに行って、あれからもう5分。遅い遅すぎる。俺は仕方なしに、三橋に電話をかけた。呼び出し音が鳴り、漸く出た三橋の口からまさかアイツの名前を聞くなんて。

「おい、お前まだ戻らねぇのか」

三「あ、べくん!は、るなさん良い人、だよ!」

「…はぁ??」

今こいつ”榛名”さん、って言ったか?榛名がいんの?てかまだ便所か?なんて言葉は掻き消された。

「廉、遅い!!」

三「ちょ頼華、ここ、だ、んしトイレ…」

…あーらら、男子便所にまで入っていきやがったな頼華のやつ。

「んなもんどうでもいいし!てかまだな訳!??」

毎回三橋に対して怒ってるのしか見たことねぇな。

榛「女子がトイレに入ってきたら不味いだろ!」

「あ、人居たんだ。ごめんなさいね、弟が」

なーんか、榛名と話してねぇか?三橋の携帯越しにしか聞こえない頼華の声に耳を澄ます。

榛「君、マネージャー?」

「あぁ、はい。西浦のマネージャーです。」

榛「…へぇ。」

…確か頼華の性格とか見た目って、榛名のタイプじゃなかったか、なんて思い出したらなんか俺まで腹たってきた。

「ほら廉!栄口くんにトイレットペーパー渡す!」

三「あ!…は、はい!」

「そして早く戻るわよ!」

榛「…ねぇアンタ、彼氏いるの?」

「彼氏?居ますよ、最高の彼氏が」


愛、お届けします!


「廉携帯!あ、隆也!今から戻るね!」


ぷつりと切れた無機質な音が耳に響いていたけれど、俺はニヤけた顔を隠す術は持ち合わせていなかった。


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