第49章 夢の中で(一方通行)
あれからお昼ご飯をファミレスで済ませたふたりは家に戻っていた。
今日は早めの風呂を済ませようと先に入った頼華。そのあとで一方通行は入ったのだが、何故か悶々としていた。
「…チッ、クソが」
悶々としながらも、濡れた頭をタオルで拭きながらダイニングに向かう。
「…寝てるのか」
濡れた髪も乾かさずに、ソファの背もたれに寄りかかったまま寝る頼華の姿。髪から垂れる雫が頼華の頬を流れていく姿に、何故か甘美さを感じていた。
「…おい、」
「…んー…」
「…おい、起きろ。風邪引く。」
「…あくせら、れーた…?」
ぺちぺちと頬を軽く叩けば、未だに微睡みのなかにいる頼華は目を擦りながら一方通行の名前を呼ぶ。
「っ…」
「…あくせられーた、」
ニコリと、微笑みながら尚も自分の名前を呼ぶ頼華に一方通行は耐えきれずソファに押し倒した。
「…!??」
「…やっと起きたか、阿呆」
「…一方通行、」
「…もう、黙ってろ」
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落とされた深い深い口付け。いつもとは違う、貪り尽くすようなそれ。今まで打ち止めがいるから、とどこかブレーキをかけていたそれは呆気なく崩れさった。
今は、ただ、目の前にいる一方通行だけを、感じたくて。
「は…イイ顔、出来んじゃねーか」
にやりと笑う一方通行の目は、狩人のそれだ。私は、彼の獲物として目の前にいるのだ。
知らないはずの感覚。それは次第に、優美な快感になっていく。
まるで私の全身を知っているかのように触れる、一方通行の手。
優しい一方通行の手つきに、私はただ快感に身を投げるしかなかった。
「…ねぇ、待って」
「…待たねぇ」
「私、その…」
「…分かってる。俺もだから」
痛いはずの感覚は、全くなくて。侵入してくる熱に、絆されたくて。目の前にある快感をふたりで感じられていることに嬉々として。
「…一方通行、」
「…なんだ」
「…だいすき」
「…あぁ」
「…だいすき、一方通行」
「俺も…頼華がすきだ」
欲しかった言葉。お互いに口にすることはなかった言葉を、今どうしようもなく紡ぎたくて。
あなたとの快感の海に、おぼれていく。