第49章 夢の中で(一方通行)
「…ん、」
どれくらい寝ていたのか。外はすっかり暗くなっていて。
「…あれは、夢?」
「…何言ってんだ」
隣を見れば一方通行の姿。
「…夢じゃない?」
「…なわけあるか」
「…そっか」
そうか、私は、と思うと胸がきゅんとして。これが、恋なのだと実感する。
「…風呂、」
「え?」
「風呂入り直すぞ」
「え…待って…!」
抵抗虚しく抱き上げられて、お風呂場に連行された。
バスタブにはすでに新しいお湯が張ってあり、入浴剤なのか泡が立っていた。
「…これなら平気だろ」
「…まぁ少しは、ね」
彼と向かい合わせになって入る浴槽。恥ずかしすぎて、縮こまっていると、ふいに腕を引っ張られた。
「あ、一方通行…!」
「…俺はこれがいい」
「…ふふ、」
「何笑ってんだ」
「なんでもないよ」
一方通行に抱きしめられた状態で。背中に感じる彼の心音が心地よくて。これはいつもの甘えたモードかな、なんて思ったり。
「…ねぇ、」
「何だ」
「あれ…もう1回聞きたいな」
「…言わねぇ」
「えー………私は好きなんだけどな一方通行」
「ったく………俺も頼華が好きだ」
「…ありがとう、一方通行」
「…礼を言われるようなことしてねーぞ」
彼の過去がどうだとか、そんなことはどうでもいいの。
私は一方通行だから、好きになった。
一方通行がたとえ悪人じゃなくて、彼の言う善人(ヒーロー)であっても。レベル5の第1位じゃなくても。
彼だから、一方通行だから、好きになった。
”好き”という感情は分からなかった。
”守りたい”感情は打ち止めがくれた。
”愛”という感情は頼華だったから、できたもの。
こいつが、何者であろうが、俺が頼華を、好きなことには変わりない。
魔法の言葉は、夢の中で
__きみとふたりだけのひみつ
(お前、髪切ったり結んだりすんなよ)
(え、なんで?)
(…気づいてねぇのか阿呆)
こいつは気づいたときに見物だな。頼華の首に噛み跡やら赤い花が咲いているのを見ながら、一方通行はそう思っていた。
end
_____
こういう系初めて書きました。
言葉あそび難しい