第47章 円満(XANXUS)
食器の片付けを終えた頼華が、ダイニングに戻ればジュリアの姿がなかった。
「あれ、ジュリは?」
「…ベルと遊ぶとか言いながら出ていったぞ」
「あら、そうなの」
レオナルドとジュリアが生まれてからベルフェゴールやマーモンを中心として、あのスクアーロやレヴィ、ルッスーリアまでも皆が遊び相手をしてくれている。とはいえ、恐らくいちばん2人を可愛がっているのはベルフェゴールなのだが。
ソファに座りながら書類を確認するXANXUS。最近、書類を確認する時だけ眼鏡をかけ始めた彼だが、歳を重ねれば重ねるほどに、イタリア人の色気が増しているように頼華には見える。
XANXUSの背後に周り、ソファ越しに彼の背後に抱きついてみた。
「…どうした」
「…ふふ、なんでもない」
居心地がいい、安心するXANXUSの匂い。あぁ、私はこんなにも彼を深く愛しているのだと自覚する。
「え…わ、ぁ…!!」
急に腕を掴まれたと思ったら、いつの間にかXANXUSを跨ぐように座っていた。
「…」
「え、急にどうしたの」
XANXUSは最近お預けをくらっていたからか、内心頼華から来てくれたことに喜んでいたのだが。
なにせ生まれたのは双子で、ひとりは活発すぎる男の子、ひとりはおっとりした女の子。赤ん坊の頃は夜泣きなど一切なくて手のかからない双子だったからか、XANXUSはほぼ毎夜頼華を抱いていたのだが。
5年も経てば彼らはそれはそれは活発になる。5歳児の体力はそれは想像もつかない程に。
ぐったりと、ベッドに雪崩込むくらいに毎晩寝ている頼華を流石に起こすことはXANXUSには出来なかった。
だが、今はどうだ。レオナルドもジュリアもいない。数ヶ月振りのふたりの時間だ。
「…XANXUS、」
「…」
触れたかったものが漸く手の内に。頬に触れれば、すり、と顔を預けてくる頼華。
彼女も同じだった。XANXUSに触れたくて仕方なかったから。毎回まるで運動会のように忙しい目まぐるしい日々。XANXUSに触れる時間もなく過ぎていく日々に悶々としていたのは頼華も同じだったから。