第47章 円満(XANXUS)
「こら!!レオ!!!」
バタバタと今日も朝から騒がしいここは、ヴァリアー邸の中。ひとりのまだ小さな男の子がきゃっきゃと走り回っているのを追いかける女がひとり。
『母様、遅いから追いつかねーじゃん!』
「言ったわねー!ほら、こっち来なさい!!」
ビュウと風が吹いたと思えば、いつの間にか男の子は女の手の内にいた。
『能力使うとかひきょー!!』
「はいはい、卑怯で結構です。ちゃんと野菜も食べなさい。」
ぶうたれた顔つきの男の子は仕方なく自分の椅子に座る。
「…言う事聞かねぇと駄目だろうが」
『父様には言われたくないし』
目の前の皿に残る、緑色、ピーマンがどうにも苦手な男の子は、仕方ないとひと口でそれを口に放り込むと、丸呑みした。
『…げー、やっぱ俺これ嫌い』
「うんうん。よく出来ました。」
『ピーマン美味しいよ?』
「ジュリは嫌いなものないから偉いねー」
なんて目の前で笑う女に、隣で頬杖つきながら見ている男。男の子の隣に座る瓜二つの女の子。
”レオナルド”通称レオと、”ジュリア”通称ジュリは、5年前に頼華が産んだ双子の子だ。
ふたりともXANXUSの深紅の目を受け継いでおり、とくにレオナルドに関しては態度も含めて小さいXANXUSを見ているようだ。
『俺、スクアーロんとこ行ってくる!しゅぎょうしてもらう約束なんだ!』
「ケガしないように気をつけるのよ!」
『わかってる!』
いってきます、と男の子は早々と部屋を抜け出して行った。
「全く、誰かさんにそっくり」
「…誰だろうな」
「野菜嫌いなとこまで似るなんて思わなかった」
カチャカチャと頼華は食器を片づける。頼華とXANXUSが付き合い出してから出来たこの部屋には、前もってキッチンが備え付けられていた。あの頃から朝ご飯は必ずふたりで部屋で食べるようにしていたのだが、今はふたり増えて4人で朝食を囲んでいる。
祖国の日本よりイタリアでの生活が長い頼華だが、やはり日本人たるもの和食が恋しくなる時もあるから。とはいえ、好物が肉であるXANXUSに和食を慣れさせるまで時間がだいぶ掛かった。
今となっては、頼華の作る和食なら口にするXANXUSであった。