第43章 道の先には(火神大我)
「…はぁ。」
ア「なんだ、ため息ついて頼華」
「…アレックス。」
ア「また大我のことか?」
「…は?」
ア「お前の友達に聞いたぞー?胸がどうこうとか…」
「…わーーーー!!ちょ、なんで知ってんの!?」
慌ててアレックスの口を塞ぐ。
「なんだ、なんの話?」
「…げ、大我」
「げ、とはなんだ、げって」
わしゃわしゃと頭を拭きながら、控え室に入ってくる大我。
ア「お。私はお邪魔なようなんでお先に!」
「ちょ、アレックス…!」
アレックスは頑張れよー!なんて言いながら先に帰っていった。
「…んで、何の話してたんだよ」
「…あー、いやぁ。大我には関係ないよ」
「なんだそれ」
アメリカに来て1ヶ月。まともに話すのは久しぶりだと思う。誠凛にいた頃みたいにマネージャーをサボったりはしてないけれど、なぜか必然的に大我を避けていたのかもしれない。
同じ部屋に寝泊まりはしてるけど、ほとんど会話がなくて。
なんでこう、ぎくしゃくしてしまったのかな、私たち。
「…なぁ。」
「…え?」
「…なんか喋れよ」
「…そっちだって何か言ってよ」
もう、どうしていいかなんて分からなくて。誠凛にいたあの頃が、いちばん楽しかったななんて。控え室のベンチに座って、ブラブラさせている自分の足元をただ見つめていた。
「…頼華、」
私の足元にかかる、ひとつの影、大我のだ。
「…何」
「いいからこっち向けって」
無理やり大我の方に顔を向かされる。
「…な、によ」
「何に怒ってんのか、拗ねてるのか俺には分からねーけど」
「…」
「…言いたいこと、ちゃんと言ってくれよ」
…その顔、あの頃と一緒だ。あの、屋上に迎えに来た大我の顔と。
「俺はお前と居たいから、連れてきたんだ」
「…っ」
「お前は違うのか?」
優しく言う大我の顔に、視界が歪む。
「ちょ、おま!泣くなよ!」
「だ、って……っ」
「泣かせてるのは俺か」
ふいに浮遊感に苛まれたら、ベンチに座った大我の膝の上にいた。
「ゆっくりでいいから、俺に話してくんねーか?」