第40章 永遠に(跡部景吾)
あれから1ヶ月後。明日に卒業式を控えた日。妊娠の検診で、産婦人科に来ていた。もちろん、景吾くんと一緒に。
『今日は旦那さんと一緒に来たのね』
なんて先生に言われて少し恥ずかしくなった。
”旦那さん”か。”彼氏”から”旦那さん”になる日も近いのに、それにはどうも慣れなくてくすぐったかった。
異常はなく、順調に経過しているみたいで安心した。
検診が終わり、彼と産婦人科をあとにする。
「ちょっと付き合って欲しい所あるんだが大丈夫か?」
「え?いいけど、どこにいくの?」
「…着いてから、な」
いつもは車で移動する彼だけど、今日は電車でふたりで行こう、と。
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「え…ここ_____」
景吾くんに言われて連れてこられたのは、お母さんのお墓。
隣に立つ景吾くんの、私の手を掴む力が強くなった。
「…お嬢さんを貰います。必ず、幸せにします。」
そう言った彼は、お母さんが眠るお墓に深くお辞儀をした。
彼はいつも私の先を行っていると思ってた。けれど、やっぱり隣を歩いてくれてるんだと、あらためて思い直した。
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お母さんのお墓参りがおわって。それから景吾くんは、私の家に来ていた。お父さんと、十夜に報告するために。
父「どうしたんだい、改まって。」
「…実は、」
彼とここに来る前に、俺の口から言うから。と言われて。先程のことを思い出して膝の上に乗せた手をギュッと強く握れば、その上に重ねされる大きい手、景吾くんだ。
「…妊娠、しています」
父「………ほぅ。」
十「………マジか」
部屋に流れる静寂。怖いくらいに長く感じた、お父さんと十夜の反応に目を思わずつぶっていると、
「必ず。必ず娘さんも、お腹の子も守ります。」
だから、お許しください。と彼は頭を下げていた。
父「……ふ、」
「…お、とうさん?」
父「…いや、成長したなぁって」
そっかそっか頼華も親になったかぁ。じゃあ、俺おじぃちゃん!?なんて、言いながらにこやかに笑う父は相変わらずだった。十夜はそんな父に、始まった、って顔してた。
先程までの静寂はあっという間にかき消されていた。