第37章 表裏一体(XANXUS)
「…頼華?」
少女の瞳から光が消えていくのがわかり、スクアーロは例えようの無い戦慄が駆け巡る。…この顔、8年振りに見た、なんて。
XANXUSがどこの任務についているか把握していた彼女は、スクアーロの制止も聞かずに部屋を駆け出した、半面を手に。
「っ…ゔぉい、NAME1#、待て…!!」
気づけば少女は暗い森の中。森の中にひっそりと佇む城。ここに、XANXUSがいるのは間違いない。そう自分の超直感が言っている。
「…全部、消し飛んじゃえ」
そう言った彼女が両手をあげれば、一気に吹き上げる風。もはや嵐になる前のそれは、どこかどす黒く城の建物をすべて吹き飛ばした。
「な、なんだお前!?」
「1人で来るとは、命知らずな!」
ぞろぞろと湧いてくる敵。おそらく50はいるか、と思いつつも、半面を被った少女。
「…ふふ、あははははは!!!」
「な、なんだ、ありゃ」
「…ねぇ。XANXUSはどこ?」
にこやかに微笑んだ半面を被った少女は、片目を赤く充血させていた。
「何やってんだ!たったガキ1人だろ!やっちまえ!」
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一足遅くついたスクアーロは、XANXUSの任務先である城にたどり着く。
「…これは、」
跡形もなく吹き飛んだ城の、城壁だったもの。その瓦礫で塞がれた通路の奥から聞こえてくるのは、おそらく頼華の奇声。
「…はぁ。」
めんどくさい事になってしまった。
8年前のXANXUSが起こした”揺りかご”事件。XANXUSがⅨ代目に凍らされた際、暴走しはじめた頼華。あのとき7歳だった少女は、今と同じく半面をつけて片目を充血させていて暴走状態に入っていた。
あの頃、こんな力がわずか7歳の少女にあるなんて思ってもいなかったスクアーロ。
どうすればこの暴走状態を解除できるか、なんてわからずに。ただ、たまたま少女の半面がはね飛んでしまえば、暴走状態は解除されていたのだが。
だがあれから8年。そんなもので果たして解除できるのか、なんて思いつつ地下牢へ向かっていった。