第32章 しるし(XANXUS)
「そ、それで、あの…」
「…」
「…か、える前に、キス、された」
俺の膝の上でそういう彼女は俯いていたけれど、耳まで赤くなっているところを見るに、思い出してるのだろう。
そんな顔させてるのが10年後の俺であっても気に食わねぇ。
「…頼華、顔上げろ」
「な、なに_____ん、」
最初は啄むように、ただ触れるだけの口付け。
その間も、恥ずかしいのだろう彼女はすでに潤んだ目をしていて、無意識に喉がなる。
「…舌、だせ」
「…っん、ぁ…」
素直に俺に従う頼華が可愛くて。一生懸命に絡ませてくる小さな舌を、すべて絡みとってやれば、愛らしいくぐもった嬌声が響く。
がっつきたい気持ちを抑えながらも、俺の気持ちをわかって欲しくて。そろそろ苦しくなってきた彼女の要求で、ようやく口を離すと、銀色の唾液が糸を引いた。
「ざ、んざす…」
「…ゆっくり息しろ」
背中をさすってやれば、上下に動く小さなからだ。
「…やきもち、?」
「…は?」
「やきもち、妬いたのかな、って…」
…そうか。彼女の言葉で俺は合点がいった。
この、黒い何かは、嫉妬、なのかと。
「チッ…」
「…あ、ざんざす…?」
「…悪ぃか」
「…!」
あのXANXUSがまさか嫉妬してくれる、なんて思いもしなかったから嬉しくて。
10年後の彼は確かに大人びて、色気も増していてかっこよかったけれど。今の私は、目の前の彼がいい。
「ううん、悪くないよ。」
「…そうか」
「…嬉しい、なーんて」
「…アホ」
そうだ。10年後の俺であっても、今の俺自身じゃないと、頼華に触れることは許さない。こんなに、独占欲強かったのか俺は、なんて初めて知った。
「…」
「…XANXUS?」
もう。誰にも、触らせたくない、”今の”俺のモノ。
しるし
____赤い花を咲かせて
(わ、ちょ、ざんざす!)
(…なんだ)
(なんでこんなに首に、つけたの!)
(…お前が悪い)
(…へ?)
(もっと付けてやるから覚悟しとけ)
赤い花は直ぐに消えてしまうけれど、俺のだという”しるし”を早くつけなければ、なんて心に思って。
end
______
10年バズーカいいですよね〜
おまけあり→