第32章 しるし(XANXUS)
(10年後side)
再び白い煙の中から愛しいひとの姿が。帰ってきたか、なんて。
「ただいま、XANXUS」
「…あぁ。」
「どうだった?15歳のわたし」
「…容易い」
「なにそれー!」
ふふ、と笑い俺の横に座った。
「…身体は大丈夫か」
「うん、平気。24歳のXANXUS、やっぱ若かったなぁ」
「はっ…言ってろ」
「…でも今の私はあなたがいい」
「…あぁ」
そう言って、俺の肩に身体を預けてくる頼華の腰に手を回して。
俺が15歳のお前にちょっかいを出したと知ったら、お前はどんな反応をするんだろうな。10年前の24歳の俺は、頼華に対してまだまだ遠慮がちだったから。だからその手助けに、なんて。
頼華の腹に手をやりながら、空を見上げれば雲ひとつない晴れ渡った空に、未来を感じて。
(10年後side end)
_________
(現代side)
「えー、っと…これは?」
「……」
「あの…ざんざす、さん?」
「…良いから黙ってろ」
10年後の俺に会ってきたよ、なんて言うから。
…10年後の俺の横にもちゃんと、頼華は居たのかと内心ほっとして。
それと同時に何かわからない感情が込み上げてきて。
「ん…くす、ぐったい、」
…こいつはきっと、10年後の俺に何かされたに違いなくて。俺には超直感なんてもんはないけど、こいつの事となれば話は別だ。
俺ので、俺のじゃない、彼女からする匂いに黒い何かがぐるぐると俺の中を駆け巡って。
「…どこ、触られた」
「ん、ぇ…??」
「…早く言え」
「あ、えっと…手の甲に、きす、された」
クソが、やはり手ェ出されてんじゃねーか。
「…ここか、」
なんて。ソファに座らせた彼女の小さい手を握り、目の前に跪く。手の甲に口付けてやれば一気に染る赤。
「…あとは何された?」
「あ、あと…あっちについたら、その…」
「…なんだ」
「…XANXUSの、膝の上だっ…ひゃ、あ!?」
「…それで?」
…もしかして、XANXUS妬いてるの?
10年後の彼から何をされたかと執拗に聞いてきては、同じ行動を取るしXANXUSに、きゅんとしてしまった。