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Amor vincit omnia__愛の勝利

第29章 酩酊のなかで(跡部景吾)






「……景吾くん、」

「ん?」



俺たちはすでに迎えに来ていた財閥の車に乗り込むと自宅へと向かっていた。




「…ありがとう、景吾くん」



微笑む彼女の顔は酒によるものなのか、すこし赤らんでいた。




「…お前、飲みすぎたんじゃないか?」

「だって、みんな渡してくるから」



まぁあの状況で断りきれない性格の彼女が受け取らないはずもなく。

家では俺に付き合う程度にしか飲まない彼女だが、たぶん、おそらくそれより飲んでいるのでは、と。





「ついたぞ……って、頼華」

「……ん……」

「……寝てんのか」



彼女を姫抱きにして車を降りる。
その足で俺たちの部屋に向かっていた。




「おかえりなさいませ、景吾様に頼華様。」

「あぁ。ミカエル、助かった。」

「いえ、とんでもありません。」

「泣いてたんじゃねーか?あいつら」

「えぇ。里乃様が泣いておられましたが、景斗様が慰めておられましたよ。」




景斗、さすが俺の子供だな。やっぱり兄貴だな、なんて思った。






「……さてと、」


頼華を寝室に運び、化粧落として着替えさせてやらねーとな、なんて思っていると不意に手を握られた。



「……頼華?」

「ん……け、いごくん……」

「……寝言か」



俺の夢、見てんのか。可愛いやつだな、と額にキスをする。





「っん、ぁ……け、いご……」

「……!?」



…どんな夢を見てるんだ。そんな声出されちゃ、我慢の限界、だな。




「……頼華、」

「ぅ、や……ん、」


はやく、起きろ。と言わんばかりに彼女の全身に紅い花を咲かせていると、ぱっと目が合った。



「……起きたか」

「え、け、景吾くん……?なにして、るの?」

「なに、って……ナニだろうな?」

「……!??」



俺の下で赤くなる彼女は、酒によるものか、はたまた俺のせいか。





「なぁ、」

「な、なに……?」

「……どんな夢、見てたんだ?」

「っ……え、」

「俺様の名前を呼んで、可愛らしい声、だして」

「そ、それは……!」

「……ほんと、可愛すぎんだよ」

「っ……!」




ちゅ、と口付けしてやれば彼女の潤んだ瞳に俺の喉がゴクリとなった。



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