第26章 あなたとともに(ゾロ)
この船の中では逃げ場がない、自室だ。自室に行こう。
後ろを振り返るのが怖くて、ただひたすらに部屋に向かった。
…よし、ついた___なんて、また、開けようとした扉を大きな手によって遮られた。
「っ……着いてこないで!」
「…そりゃ無理な話だな」
「…な、んで…」
「なんで、って…その、だな…」
なんで、なんでよ。
好きじゃないのに、ゾロが私を好きになるはずないのに。
なんで、追いかけてくるの?
「あー…泣く、なよ」
「っ……え…?」
「おま…気づいてないのか、泣いてるじゃねーか」
ゾロに無理やり向きを変えられた、と思ったら目の前には彼の胸板。
抱きしめられてるの…?理解するまで頭がついて行かない。
「…何かあったか?」
「っゾロの、せいだも…ん…」
「…俺か?」
泣くなよ、なんて。なんでそんなに優しい声で言うの?
「…他に好きなやつ出来たのか」
「…は?」
「……クソコックの匂いがする」
「へ…あ!」
あぁ、あのダイニングのときか。たしかサンジが頭撫でて行ったななんて思っていたけど。
「…ダメだ」
「…え?」
「…あの野郎に渡したくねぇ」
「な、にそれ…」
「…絶対離さねぇぞ、俺は」
「…私が、誰と付き合おうがゾロに関係ないじゃん!!」
「関係大アリだろ!」
「だって私たち付き合ってないじゃない…!!」
「…は?」
ゾロがびっくりした顔でそう言った。
「だって…身体だけ、でしょ?わたしたち」
「…何言って__」
「ゾロは…私の事、どう思ってるの?」
「………」
「…好きに決まってんだろ。」
「え…?」
「…好きな女だから、手を出したんだよ。」
悪ぃか。なんて言うからゾロの顔を見れば、耳まで赤くしたゾロがそっぽを向いていた。
「…お前は、」
「…え?」
「…お前はどう、思ってんだよ…」
いつもなら自信満々に言う彼なのに、今は珍しくしおらしくて。
そんな彼がとても、愛しく感じた。
「…すき、だよ。」
「…まぁ、知ってたけどな」
「な…っ!!」
「…俺は好きな女以外に時間を割く余裕なんてねぇからな」
「…ばか、ゾロ」