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Amor vincit omnia__愛の勝利

第23章 紫煙(XANXUS)






「…あのー、ザンザス、さん?」

「……」



ティモッテオさんと家光叔父さんたちが帰ってから未だに私たちは応接室にいた。
早く自室に帰りたいのだが、XANXUSがそれを許してくれなくて。


XANXUSを背にした状態で、彼は私の肩に顔を埋め抱きしめられている状態で。
XANXUSがここまで甘えてくるのは初めてだった。





「…ねぇ、顔、みたいな」


「…仕方ねぇな」



漸く顔をあげたXANXUSをみる。
相変わらず綺麗な深紅の眼…なんて思っていると噛み付くようなキスが降ってきた。
それは徐々に深く奥底を抉るように、貪る様に噛み付いてくる。


ようやく彼の唇が離れたと思ったら彼と向かい合わせになっていた。





「…ざん、ざす」

「…なんだ」

「すき」

「…あぁ」

「だいすき」

「…知っている」



頼華の頭をひと撫ですれば安心したように体を預けてきた。

この小さい命を何があっても守ってやる。


彼女に出会うまでは自分以外のもの全てが嫌いだった。
この瞳も。思い出したくもないガキの頃。


この瞳がいちばん嫌いだった。
それを頼華は綺麗だと言った。


何もかもに全く興味を持たなかった自分がこうなるなんて昔なら想像出来なかっただろう。

それを変えてくれたのは頼華との出会いがあったから。

今は今で充分だな、そう思う。







気づけば彼女は自分の手の中で寝息を立てていた。



「…はぁ」




安心しきったその寝顔にきっと今の自分の顔は緩みきっているに違いない。
クソ鮫に見られる訳にはいかない、なんてそう思った。





左手で彼女を抱えながらソファに身を沈める。
右手で胸ポケットから紙巻を取り出して火をつけた。

一応暗殺部隊のボスとして、普段任務が続く時には口にはしないのだがたまには吸う時もある。

頼華と付き合い出してからは彼女がいるためか、口寂しいことも減ったからか吸う機会も減ってはいるが。
流石に激務が続いていた疲れている彼女を起こすほど落ちぶれてはいない。

彼女が寝てしまった手前紙巻を手にしたのだが。






「ん……」


煙で目が覚めてしまったな、そう思いすぐに磨り潰した。



「…起こしたな」

「んーん、その匂い、すき」


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