第3章 私たちには壁がある(XANXUS)
XANXUSが庭に出てみると庭の中央に植えられているイタリアカサマツの元にいる頼華とルッスーリアの姿を見つけた。
「…寝てんのか」
「あらぁボス、丁度良かったわ!」
安らかな表情で眠る頼華。そうだ、こいつは小さい頃からこの場所が好きだったなと思い出した。
イタリアカサマツはよくローマ街道でも街路樹として植えられており幼木はクリスマスツリーとしても使われる歴史的なイタリアのシンボル。その為クリスマスになるとこの大きな木にこれでもかと装飾がされていたものだ。
「食事の準備しなきゃいけないからあとは頼めるかしら」
ボス、とそうルッスーリアが告げるとXANXUSは無言で頷いた。それを確認したルッスーリアは笑顔でその場をあとにした。今日はお祝いかしらねと1人楽しそうに。
改めて見る頼華の寝顔。こんな陽気だ、こいつの事だから寝てしまうのは仕方ないかとどこか納得している自分がいた。
あんなにそばに居たのに。8年という壁が2人を隔てているのか、なんてザマだ馬鹿らしいと独りごちながらふと頼華の頬に手をやる。あぁこんなにも自分はこいつの事が─そう改めて自覚していると
「……ん」
どのくらい自分は眠っていたのだろうか。庭までなら、と外出許可が出たのを切っ掛けにルッスーリアから誘われ庭に来ていたのだとそして自分はそこが大好きな場所でいつしか寝てしまっていたのだと気づいた。目を開けてみるとそこには懐かしい人。
ずっと恋焦がれたあの人の姿。
「え……」
どうしよう、ルッスーリアは何処に行ったのかと聞き出そうとした時だった。徐にXANXUSに抱きしめられていた。