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Amor vincit omnia__愛の勝利

第3章 私たちには壁がある(XANXUS)




「ボス、頼華の所に行ってあげてよ」

「…何故だ」

「そろそろもう俺ら疲れちったよー」



ししし、っと笑うベルと少し悲しそうな表情のマーモンにXANXUSは軽く舌打ちする。まさかこの2人に言われるとはなと思いつつも自分は誰かに背中を押してもらうのを待っていたのかもしれないそう思った。

ベルもマーモンも、勿論ルッスーリアやレヴィ、あのスクアーロでさえももうこれ以上傷ついた顔で笑う頼華に耐えられなかったのだ。幹部全員、頼華がどれほどの気持ちでこの8年間過ごしてきたかを知っているから。




当の本人頼華もこの8年間ずっとXANXUSを待ち続けていたのだ。イタリアに留学してヴァリアー本部に住むようになってから毎日毎日XANXUSの元に通っては、今日はベルとスクアーロがまた喧嘩したよ。今日は学校で体術があって披露したら皆驚いてたよ。
なんて他愛のない話だ。XANXUSから返事が来ることはなくともただひたすらにXANXUSに話しかけていた頼華の声は眠っていたはずの彼の耳にもどことなく残っていた。


謹慎になってからXANXUSと同じく、いやむしろ全くなのだが頼華は自室に篭もり出てくることは無かった。
ただただ空を見上げてはまるで賛美歌のような歌声を響かせていた。

その歌声はXANXUSだけでなく幹部全員の耳にも入っていて。その悲しそうに歌う唄声が耳をついて離れなかった。だって彼女が歌っていたのは愛の讃歌だったから。



XANXUSは1人そう考えながら暫くして重い腰を上げゆっくりと扉の方へ歩き出した。歩き始めはゆっくりだったものの、どことなく少し早くなっていくXANXUSの足取り。



「…ししし、やっと頼華が笑えるな」

「…これで僕も一安心さ」

「珍しいよなー、マーモンまで動くなんて。お前金ねーと動かねぇじゃんか。」

「ム、失礼だなぁ。…僕だって頼華にもボスにも幸せになって貰いたいからね」



これで頼華が笑えるようになるのなら僕はそれで構わないさとXANXUSの出ていった扉を見つめる2人の眼差しはとても優しいものだった。

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