第3章 私たちには壁がある(XANXUS)
スクアーロを含めヴァリアー幹部が危惧していたのは他でもないXANXUSと頼華の事だった。
XANXUSが融解されてからというもの、リング争奪戦の時でさえ2人が会話しているのを目にしていない。8年振り、というものもあるのかあのXANXUSでさえも彼女に話しかけたりすることは無かった。
XANXUSといえばスクアーロに対する暴力は日に日に増している。これは2人をどうにかしないとスクアーロの体も持たないと思い彼等は珍しく意見が一致し動き出した。
謹慎から1ヶ月。相変わらず外出は出来ないのだが庭までならと許可が降りた。その日はよく晴れており散歩には調度良い陽気。その日も昼間からXANXUSはソファに深々と腰掛けながらブランデーを嗜んでいた。
「…チッ」
太陽を見るといつも思い出されるのが小さい頃の頼華の姿だった。天真爛漫でいつも笑っていた彼女はXANXUSにとってとても眩しいものに見えた。普段は男勝りで小さいながらも幼少期から嗜む空手でよくボンゴレ幹部にイタズラをし走り回っていた頼華。
8年振りに冷えきった氷から解放された時に見た彼女の姿はどこか幼さを残しながらも少し大人びた様子だった。とはいえ9つも離れている餓鬼に何を思っているのだと1人ため息を吐いたのを覚えている。
無償の愛などいらない、と自分に言い聞かせてきたではないか。けれどリング争奪戦での頼華の闘い振りには感服させられた。ありえない程の破壊力を持ったその拳と脚で自分の為に闘ってくれていた。だが所々で見せる彼女の儚げな笑顔に目を背けるしかなかったのだ。
XANXUSには愛し方がわからないから。
ふと庭に目をやるとそこには頼華の姿があった。なにやらルッスーリアに庭に連れ出されたらしい。
謹慎になってからというもの、XANXUSはほとんど自室から出なかった。部屋には風呂だってあるし食事は運ばせている。頼華に会ったらどうしていいか分からない自分がいるからだ。ドカスが、と心の中で自分に言いながら目を閉じた時だ。
「…ボス?」
「……入れ」
部屋に入ってきたのはベルとマーモンだ。何しに来たと言わんばかりの殺気溢れたXANXUSの表情に2人は少し怯えたが漸く口を開いた。