第4章 私の太陽【煉獄杏寿郎】
あの日深影と2人で胡蝶に手伝いをさせて欲しいと願ったら
少し驚いた風だったが カナヲが隊士になってからは人手が足りなかったらしく
「煉獄さんの奥様なら喜んでお受けします」
そう言って快く引き受けてくれた
退院してしばらくしてから蝶屋敷には週に3日通う事になった
元々深影は煉獄家で下働きを幼い時からしていたし 暇を出されてからは小料理屋の手伝いをしていたので
蝶屋敷の下働きはすぐに覚えて 1ヶ月位たった頃には試しに1週間の献立を作ってみて下さい と言われたと
楽しそうに机に向かい丁寧に墨をすりながら献立を考えている
「若い男性が多いから濃い味がいいかな…でも野菜も沢山食べさせたいし…」
ぶつぶつと独り言を言いながら机に向かっている深影を庭で素振りをしながら眺めていた
素振りを終えて井戸で汗を拭い 着流しに着替えて部屋を除くと深影が
色々な献立を書いた紙を畳に並べて組み合わせやら品数やらを まだぶつぶつと考えていた
そっと後ろに座る
集中すると回りが見えなくなるのは昔から変わらないな…
隊士になって初めて深影にあげた簪が後ろで結ってまとめた髪に刺さっていた
陶器で出来ていたウサギは割れて無くなっていたが赤い珊瑚は普段から手入れをしている様で艶やかに光っていた
まだ俺に気付いていない深影のうなじに手を伸ばしそっと人差し指の爪で撫で上げた
「きゃっ!」
肩を跳ね上げて深影が悲鳴をあげる
予想通りの反応に思わず笑い声がでた
そのまま深影を後ろから抱きしめて深影の右の頬に俺の左の頬をよせ
「余りにも夢中になってたから からかいたくなった 許せ深影」
「もう…びっくりしました…杏さま お茶でも入れましょうか?」
返事のかわりに右頬に唇をよせた 抱きしめている深影の体温が少し上がった
小さな耳を見ると首まで桃色に染まっていて俺の顔をざわつかせる
「今は深影の側にいたい…」
小さな耳に口付けを落とし吐息を耳に流し込むと深影の肩が震える
「杏さま…まだ昼です」
左手を袷に滑りこませると 艶を含んだ吐息を吐き出した
「久しぶりなんだ 深影の全てを見たい」
弱く抵抗をする右手を取りそっと指先を口に含むと
墨の香りが鼻に抜けた