第16章 露草の消ぬべき恋も【宇随天元】
隣にいた峰緒の父親が遠慮もせずに渾身の力で宇随に肩パンを食らわした
「親父さんマジで派手に痛てぇよ…」
「根本的な性格は本当にどうしようも無く地味な奴だな
左目と左手を失い毒で死にかけたんだろ?それでも生き残っただから生き抜くしかないんだよ
「幸せ」と思う事に罪悪感があるなら 嫁や子供達や会社の皆の「幸せ」の為に人生を捧げればいい
その結果自分も「幸せ」ならいいじゃねぇか
派手で色男の宇随天元様だろ!らしくない情けない声をだすな!
色男が下なんかむくんじゃねぇ!」
今度は背中をバシッと叩かれた
本当の親父に殴られた時はただ固い拳が痛いだけだった
そのまま背中に触れている大きな手は温かくて義理の親父に殴られた痛みは体に温かく沁みていく…峰緒の親父が本当にこの人で良かったと心底思った
俺達に気付いた峰緒が笑顔で手を振った
その隣には悪阻で少し痩せた雛鶴が座り峰緒が作ったさくらんぼの甘煮を須磨と一緒に食べて「美味しい」と言って微笑む
縁側にはまきをの大きな腹に手をあてて笑い声をあげる露花と天元がいた
みんな笑って…派手ないい家族じゃねぇか
「親父…って呼んでもいいか?」
「当たり前だ つまんねぇ事ばかり今日は言うな 天元よ…」
「だな…地味な俺はらしくねぇ!これからド派手に生きて行くぜ だからちゃんと見ててくれな…親父」
「また地味な事言い出したら今度は尻を蹴り飛ばしてやるよ」
蹴り…流石にそれはゴメンだと天元は笑い 峰緒の所へ駆けていった
ー終ー